活力企業

醸材販売業で昭和29年に創業し、昭和60年からは酒の量販店「セルフ片山」を展開してきた片山商事。現在は「健康生活を応援する」をテーマに、「ナチュレ片山」「ナチュレ片山ピアBandai店」という店舗を通して広くメッセージを発信しながら、提案型総合商社として歩んでいる。同社が「食」の大切さを伝えることになったきっかけ、そして、これからの展望について話を伺った。

昭和29年創業の片山商事は業務用酒販や業務用アメニティーグッズなどの各種用品販売、そして小売店の「ナチュレ片山」を運営する会社だ。平成29年にオープンした「ナチュレ片山」は独自の目線で“安全と品質”にこだわった自然栽培・有機栽培の野菜や米、肉、魚などの食材や、自社開発の食品や日本酒、ナチュラルワインなどを販売している。「食を提供するにあたって、健康の後押しになるものでなければいけないと思っています」と片山政博社長は話す。
片山社長が食品について深く考えるようになったきっかけは、酒の量販店のセルフ片山のオープンだ。「食品も販売することになったのですが、醤油を見たら大手メーカーの商品ばかり。〝地方で伝統的な造りをしている醤油もあるはずではないか〟と思ったんです。調べると、伝統的な造りは発酵に時間がかかるが、おいしいし、体にもいい。価格が高いという人もいるかもしれませんが、それだけの価値があるし、また買いたくなると思います」。

納得いく品物を探すためには自分で足を運ぶことが大事、と片山社長。印象に残っているのが、阿賀町の山﨑糀屋との出合いだ。「たまたま看板を見つけて尋ねたら、ちょうど薪をくべた大釜で味噌用の大豆を煮ているところでした。見ていきなさいと案内されて。いま人気商品になっている塩麹もそのとき知りました。塩は何を使っているかと聞いたら、海の塩だという。それはいい、と思いましたね。その時、山﨑さんから〝これをぜひ新潟市で売ってくださいよ〟と言われて、ピアBandai店で販売を始めました。そうして徐々に全国から良いものを見つけられるようになりましたね」。
世の中と共に、流通・販売の世界も日々変化している。「世の中の流れを分かっているかどうかで、この先も生き残れるかどうかが決まります。IT化や少子化、人口の超減少といったさまざまなデータを考えていけば、時代も見えてきます」。そうしたなかで、いま注目し、新たな事業展開を考えているジャンルが「冷凍」だ。

「保存料を入れないで加工品を作ることを考えたら、冷凍品にすればいいんだと気づきました。しかも、急速冷凍の技術を使うと、安全でおいしくお届けできます。さらに、台湾の物産展で店舗に置く蓋つきのショーケースを見て、これなら温度変化が少なく、品質を保持できる、と導入を決めました」。
さらに、商品を自社製造するために加工場も作った。「効率化の追求と、食の安全を両立させようと考えると、自分たちで作って店に出すのが一番リーズナブルなんです」。

そうして作り始めた商品のうち、自信作のひとつが「無農薬玄米のおにぎり」だ。「ナチュレ片山本店」には、1階で販売している食品や調味料を使った料理を提供する「ナチュラルレストランかたやま」を2階に併設している。ご飯は白米と玄米を選べるのだが、オープン当初の販売数は8対2だった割合が、現在は逆転して1対9と、玄米人気が非常に高い。「玄米は栄養があって体にいいことは、皆さん知っていると思いますが、実際に炊くのは大変ですよね。このおにぎりがあれば、みそ汁と青菜でもあれば、栄養バランスはばっちりです。ポイントは、玄米を炊いたあと、少し置いて熟成すること。それによっておいしい玄米になります」。これを冷凍販売することで、いつでも手軽に味わってもらえるという訳だ。

そして、いま、冷凍食品の独自の販売スタイルを作っていこうとしている。自動販売機を活用し、社員食堂替わりにするなど、手軽に夕食が準備できるよう仕事帰りに購入できるような形を目指している。「安心安全でおいしいものを、みなさんに食べていただきたいので、届ける仕組みを考えています。“食からの世直し”と言っているのですが、私たちの取り組みが少しでも世の中のためになれればいいなと思っています」。