「幸せ」を生む循環型農業

株式会社鬼や福ふく

養豚が盛んな津南町で代々農業を営んできた鬼や福ふく。養豚は手掛けて50年以上になり、ブランド豚「鬼の宝ポーク」は、スタッフの愛情が込められた自慢の豚肉だ。噛むほどにうま味があふれるおいしさの秘密は、豚たちの幸せを思って実現されたフリーストール飼育にある。極力ストレスを与えない環境での養豚と、そこからできる有機堆肥で作られるブランド野菜たち。養豚を軸にした循環型農業で、地域の幸せを追求している。

  • 後列左:代表取締役 島田 福徳さん

おいしさの理由は豚への愛情

鬼や福ふくは、豪雪地として知られる津南町の豊かな自然環境のなか、稲作を中心に農業を営んできた生産法人だ。代表の島田福徳さんは20代目にあたるという。雪に閉ざされる冬場の収入源を得て安定した経営を目指そうと、先代が取り入れたのが養豚業だ。50年以上前から続く養豚業の転機となったのは、平成21年に導入したフリーストール飼育だった。
「日本の養豚業は、ストールという柵に入れて豚を飼育するのが当たり前でしたが、私も父も、狭い柵に入れているのがかわいそうだとずっと感じていました。そこで、柵に入れないフリーストール飼育を導入しようと、オランダの会社からシステムを取り寄せたのが始まりです」と島田代表。増頭に伴い豚舎を改築するタイミングでシステムの導入を決断した。自由に動き回れるようになった豚たちは大きく健康に育ち、分娩時の難産も減少したそうだ。

  • 鬼や福ふくでは、母豚170頭、肉豚2500頭を飼育。
    母豚は柵の無いフリーストールの環境で過ごす

  • 豚舎は種豚舎、離乳舎、肉豚舎の3棟に分かれている

国内初の取り組みとなったこの飼育方法は、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」にもつながるとさまざまな業界からも注目を集めている。導入のきっかけとなったのは、島田代表が20代の頃に経験したアメリカでの農業研修だ。
「父の仕事を継ぐ前に、新潟県国際農業交流協会が企画する海外研修に参加したんですが、その頃の私はとても慎重派で、現地のボスに“心配し過ぎだ”とよく言われていました。1年の研修期間中に、恐れずに挑戦することの大切さを教わりましたね。帰国して、豚のために何ができるだろうかと考える中で、快適な環境を整えてあげたいと思うようになりフリーストールの導入を決めました。アメリカでの経験が無ければ、国内で導入事例の無いシステムに挑戦することはなかったと思います」。
良質なエサを食べ、快適な環境で育った豚たちから生まれる「鬼の宝ポーク」は、噛み応えがあり、しゃぶしゃぶにするとアクが少なく、良質な脂が実感できると好評だ。朝、豚舎を見に行って、15頭ほどの子豚たちが皆元気に生まれているのを見ると本当に嬉しい、と語る島田代表。「豚たちがかわいくて、毎日過保護に育てています(笑)。豚の幸せを願って今後も挑戦していきます」。

  • 一度の出産で平均14頭、多い時には20頭もの子豚が生まれる

  • 豚のエサは、成長に合わせてトウモロコシ中心から麦中心に変えるなど
    工夫を凝らす

日々豚の世話をするスタッフの表情や姿には、豚への愛情があふれている

  • 豚舎の裏手には獣魂碑が建つ

有機堆肥で作るブランド野菜

同社で手掛ける農産物は、養豚からできる堆肥を活用して作られ、自社内での循環型農業に取り組むとともに、一つの作物が不調なときには補い合って経営が成り立つように、という考えも根底にある。
「鬼」の名が付くブランド野菜として最初に取り組んだのは、優しい甘みで人気を博すトウモロコシの「鬼もろこし」。勇ましいネーミングは、栽培を始めた当初、一晩で畑全てのトウモロコシを熊に食べ荒らされてしまったことから、熊よりも強そうな「鬼」を名前に付けたのだそう。栄養価の高い野菜作りに欠かせない有機堆肥をふんだんに使用して大切に育てられた鬼もろこしは、一つ一つ手作業で丁寧に収穫される。甘さの中にも爽やかさがあり、一口食べたら病みつきになる食感の良さにも自信がある。「恵味(めぐみ)という品種を毎年栽培しています。トウモロコシのうま味と甘味を逃がさないように、電子レンジで加熱してそのまま食べるのがおすすめです」。

  • 実がぎっしり詰まった鬼もろこし

  • 鬼の宝にんにく

そして、例年9月に植えて、翌年6月に収穫される「鬼の宝にんにく」。乾燥させた後、8月から通年販売される。「一般的なホワイト六片ですが、当社のものはニンニク特有のにおいが控えめなのが特徴です。雪の中で冬を越すことでうま味が凝縮されます。料理のおいしさを引き立ててくれますよ」。
昨年からは先祖代々続けてきた米の生産をやめ、養豚と野菜作りに専念することを決断。今年からはアスパラガスの出荷を始める。「アスパラガスは種から植えて収穫できるまでに3年かかります。初収穫のアスパラガスがようやく出荷できそうなので楽しみですね」。
トウモロコシ、ニンニクに続く定番野菜を作れないだろうかと常に模索している島田代表。「地域のためになる仕事をする」を理念に、地域のため、そして、従業員とその家族のために、これからも“繊細に、大胆に”新しい挑戦を続けるだろう。

お問い合わせ

株式会社鬼や福ふく

〒949-8125
津南町大字上郷宮野原1249番地
TEL:025-766-2450
FAX:025-766-2460

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