地域の力を集めて未来へ

株式会社大日

柏崎市矢田にある「大日」は、令和4年に農事組合法人を株式会社に組織変更。それにより、農業を取り巻く環境の変化に合わせた事業展開が出来るようになり、新たな可能性を広げている。設立直後の中越沖地震、裏山から水を送る隧道の老朽化など、何度困難に見舞われても、そこでいつも挑戦の道を選び、地域の団結力を強めてきた同社。その動きはいま、各方面から注目されている。

  • 前列中央:代表取締役 石黒 芳和さん

中小企業になったことで事業の幅が広がった

株式会社大日(旧矢田営農組合)のライスセンターや加工場がある柏崎市矢田は、背後に山があり、日本海の方向に向かって平野が続くエリア。「農地の7、8割が平らな良い土地。後ろに山があるというのは安心感がありますね。夕日がとてもきれいで、冬は田んぼに白鳥が飛来するんですよ」。代表の石黒芳和さんは、矢田の土地の魅力をそう話す。作付けしているのは米を中心に、マコモタケや枝豆、ブロッコリーなど。加工品として、各種漬物やマコモタケの葉を練り込んだまこもうどん、乾燥にんにく、切り干し大根なども製造・販売している。

  • 生産者の妻ら、女性陣が手掛ける加工品。
    まこもうどんはシコシコとした食感が特徴。
    乾燥機を活用した乾燥にんにくは使い勝手の良さが好評だ

  • 「ミックス野菜の朝鮮漬け」「きゅうりの粕漬」など、
    季節で変わっていく漬物の種類も豊富。
    首都圏の角打ちの店のおつまみで出されているものもある

平成19年、柏崎市矢田地域の農事組合法人としてスタートした矢田営農組合は、昨年、株式会社に組織変更した。ひとつのきっかけは新潟県内のJAの合併の動きだった。「JAが大きくなっていくなら、農家も大きくならないとバランスが悪い。ドローンが普及し、無人トラクターが動くという昔は考えられなかったことが現実になっていく時代についていくには、やはり会社でなければ無理だと考えていました。集落営農では後継者も育てられないが、会社なら農業を志す人から選ばれる基準のひとつになると思っています」。
社名の「大日」は近くにある大日山から命名。今後、矢田の周辺エリアも加わるにあたって、地域全体をイメージできる名称にしたい、という思いから選ばれたものだ。
中小企業になったことで、経済産業省のものづくり補助金を活用することができるようになり、以前から挑戦したかった冷凍枝豆の商品化が実現。固ゆでして皮をむいた枝豆をマイナス35度で瞬間冷凍する。地元のお菓子メーカーや学校給食への導入が決まっているほか、今後販路を広げていく計画だ。

  • ものづくり補助金で導入した瞬間冷凍機では枝豆が一粒ずつパラパラに冷凍でき、
    業務用として販売していく予定

  • 撮影時は「月夜音」という品種の枝豆を選別中

農業用ドローンの導入もいち早く行ってきたが、いまは注目の農業資材のバイオスティミュラントの試用にも活用している。「作物のストレスを制御する資材で、有機栽培が盛んな欧州で盛んに使われています。日本でもきっと主流になってくると思って、ここ数年、いくつかのメーカーのものを試しています」。

攻めの営業が出来ることで棚田も守れる

大日は前身の法人立ち上げのときから、苦難に見舞われてきた。数年の準備期間を経て平成19年1月に矢田営農組合を設立すると、その年の夏、中越沖地震が発生し、作業場が全て損壊。新しい建物を作るには4,000万円ものお金が必要となり、途方に暮れていたとき、復興計画の一環で国からの融資の話があり、今日中に返事をするように言われたという。「返済できるか不安はありましたが、それしかないから話に乗った。後に復興基金からの補助も追加されたので、運が良かったですね」。

  • 補助金を活用してブランド化を推進。パッケージには「ヤタらうんめぇ」のマークが必ず表示されている

農業の六次産業化を進めるための補助金では「ヤタらうんめぇ」の商標登録を取得。「このブランドがあることで、東京の百貨店や高級スーパーへ売り込んで扱ってもらえるようになったと思います」。
直近では、裏山のため池から農地に水を引いている隧道(ずいどう)が老朽化し、直すためには高額の負担が必要になった。そんなとき、農地中間管理機構から農地集積事業の話があがり、地元負担無しで圃場整備を行い、補助金で隧道の整備代も賄えることになった。「話を頂いたときは、即答でした。田んぼの集積は必要だと思っていたし、隧道を直さなければ農地に水が無くなりますから、両方の課題を解決することができました」。幸運の女神には前髪しかない(チャンスは一瞬だから逃さないように)というイギリスの諺があるが、まさに好機を逃さず挑戦を選んできたことが、今に繋がっている。

来シーズンは圃場整備で米作りができないため、その間の収入確保のためにアスパラのハウス栽培を開始。
地元と首都圏への出荷を予定

同社は先進技術を取り入れ、圃場の大規模集積を進めながら、一方では地域の棚田も守っている。「飯寺の棚田」は農林水産省の「つなぐ棚田遺産」にも認定されている。「古いものを守っていくのも、株式会社だからできる。集落だけでは難しいです。次の世代につながるように、地域のためになる農業を進めていきたいと思っています」。

  • 事務所外観

  • 倉庫のシャッターには地域の名所などが描かれている

お問い合わせ

株式会社大日

〒945-0215
柏崎市大字矢田184
TEL:0257-35-7555
FAX:0257-35-6535

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