家族の一体感で歩む農業

農事組合法人石山農産

新発田市で米、越後姫、新発田牛を生産している石山農産は、石山夫妻とふたりの息子さんによる家族経営の農業法人だ。米を作り、その稲わらを牛に食べさせ、堆肥を田んぼに撒くという、畜産と稲作の循環農業に取り組んできたが、子どもたちが加わることになったのをきっかけに、専門家のアドバイスを受けて経営を見直し。その成果がいま、しっかり現れている。

  • 写真左から2番目:代表 石山 恵美子さん

息子たちの就農をきっかけに法人化

越後姫を栽培しているハウスや、手作りの牛舎が並ぶ石山農産の敷地。その横にはずっと先まで平らに広がる水田の風景。「春のしろかきの後、水を張った田んぼに夕日が映るのが本当にきれいなんですよ」。今年の稲の刈り取りが終わった田んぼを眺めながら、石山農産代表の石山恵美子さんが教えてくれた。
石山農産は石山正博さん・恵美子さん夫妻、そして長男の豪紀(ひでとし)さん、次男の勝徳(かつのり)さんの家族4人で、米、越後姫、和牛を生産している。越後姫を担当しているのは豪紀さん、和牛を担当しているのが勝徳さんだ。田植えや稲刈りは全員で協力しながら取り組んでいる。

  • 牛舎や堆肥小屋など、建物のほとんどは
    正博さんが仲間に協力を得ながら手作りしたもの

  • 堆肥は米糠と合わせてお米の肥料に

  • 50年以上使っているというトラクターはいまも現役。自動車整備の経験を持つ豪紀さんがメンテナンスしている

法人化するきっかけとなったのは、息子さんたちの就農だった。「2人とも他産業を目指していたので、後継者はいないと考えていたところ、思いがけず2人とも就農することになって大変うれしかったですね。ただ、当時の経営は稲作と交雑牛肥育の2本立てだったことや、兄弟の立場を思うときに経営形態はどの様にすべきか、との思いから畜産協会のコンサルタントに相談をしました。そこで提案されたのが、法人組織にすることによって、役員という同等の立場で経営意欲を向上することになるのでは、と言うアドバイスでした」と正博さんは振り返る。

  • 株から伸びるランナーから新しい苗を作って栽培していく

  • 3棟のハウスで越後姫を栽培。大粒のものを求めて予約を入れる常連のお客さまも

設立に向けては、新潟県の支援事業を活用し、「企業診断士に現状の経営を分析してもらった結果、生活に必要な所得を得るには、経営の組み立てを大幅に見直さなければならないということでした。普及員の方々やJAの担当者から、様々なアドバイスをいただいた結果、イチゴの高設栽培(越後姫)に取り組むことにしたことが一番のターニングポイントでした。また肥育牛は、チャレンジ的要素が多分にありましたが、交雑牛肥育を和牛去勢肥育に切り替えることで、体制は3本柱になりました。さらに低米価対策の一環として、新潟県のアドバイザーの指導をいただき米の直接販売に当面10トンを目標に取り組むこととしました。具体策の第1弾として県内外の様々な方面にチラシを配布し、現在の販路を作ることができました。」

  • 平成21年当時、直接販売の販路開拓のために
    作ったチラシ

  • 堆肥散布の様子。水田は16ヘクタールあり、現在の作付けは15ヘクタール

小粒でも存在感ある地域のモデルに

牛舎の横にある倉庫には堆肥、そして米糠が積まれている。これらを栄養にして育つコシヒカリは「おいしい」と好評だ。「リピートしてくださるお客さまも多くて、新米の時期は発送が大変でうれしい悲鳴です」と恵美子さん。目標の10トンはしっかりクリアしているそうだ。
勝徳さんが担当する肉用牛は、にいがた和牛の一番新しい地域ブランド、「新発田牛」として販売されている。令和3年には新潟県の肉牛枝肉せり販売会で最優秀賞を受賞するなど、その品質が認められている。

黒毛牛は約2年間肥育。背中をこすれるようにタイヤを吊るす、おがくずを敷いて気持ちよく寝てもらうなど、
ストレスのない環境を整えている

  • 令和3年に新潟県の肉牛枝肉せり販売会で最優秀賞を受賞

豪紀さんが担当する越後姫は11月から翌年6月まで出荷を行っていて、約6トンを生産。導入当初は、越後姫の品種開発に携わったメンバーのひとりだったという指導員から指導を受け、生産を軌道に乗せた。シーズン中は朝採りイチゴの直売を行っているほか、大粒のものだけを詰め合わせた贈答用越後姫の人気も高い。「令和5年の夏は本当に暑くて、米の品質が悪く売上額は落ちてしまいましたけれど、会社としてはイチゴと牛に助けられている。会社としての理念は、強いて言うなら“動く”ということ。ふたりともよく動いて、良い仕事をしてくれてうれしいですね」と正博さんは目を細める。
ここまでの歩みを振り返り、大切にしてきたのは人とのつながりであり、出会った人々から多くの教えをいただいたことで今がある、と話す正博さん。「これからの農業は、より一層経営感覚を磨かなければ難しい。基本的に情勢変化に強いのは、パートさんを駆使しての家族農業だと思いますが、今後経営を維持発展するには、年間雇用も考えなければならないでしょう。そこから経営は新たな段階に入ることになりますが、ふたりでより連携を深め、地域で小粒でもピリッとした存在になってほしいと思っています。」

  • 事務所外観

お問い合わせ

農事組合法人 石山農産

〒959-2457
新発田市下今泉42
TEL:0254-24-7412
FAX:0254-24-7748

読者プレゼントがあります。
応募フォームからご応募ください

応募は終了しました