砂丘で育つ極上里芋

『砂里芋』

10年余りで驚きの大出世

新発田市と聖籠町の砂丘地で生産されているブランド里芋の「砂里芋」。よく“砂地で育つ野菜はおいしい”と言われるが、「砂里芋」もまたしかり。本来、水が大好きな里芋を水はけの良い砂地で育てることで、柔らかく、上品なぬめりと甘みがあり、さらに見た目にも美しい里芋になるという。平成17年に出荷を始めたときは“誰も相手にしてくれなかった”という「砂里芋」は、いまでは日本一の平均単価を誇る高級里芋に成長。驚きの出世の影には、そのおいしさを信じて作り続けた生産者たちの努力があった。

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3人でスタートした砂地栽培への挑戦

ブランド里芋「砂里芋」の存在は、地元以外の新潟県民にはまだよく知られていないかもしれない。それもそのはず、砂里芋は出荷量の9割あまりが関東を中心に大阪や名古屋などの県外市場へ送り出されている。最近では大手スーパーのプライベートブランド野菜に採用されたほか、お取り寄せやふるさと納税の返礼品などで人気が高まっている。
引く手あまたの理由は、やはりそのおいしさ。真っ白で身の締まりがよく、ぬめりがあってもっちり食感。そして甘みと旨みを感じる。この砂里芋ならではの味が生まれる秘密は、育てる砂丘地にある。生育条件が過酷な分、芋がおいしく育つのだという。

JA北越後さといも部会の部会長を務める小林八寿夫さんの砂里芋畑を訪ねると、土壌はさらさら。砂丘地ならではの土質だ。「砂地は水はけがいいので、雨がなければ水やりは毎日。土の栄養分も少ないので、肥料も重要。有機質肥料を追肥しながら調整していきます。連作できないので、倍の面積の畑が必要だったり、苦労はいろいろありますよ」と小林さんは話す。

  • 小林さんは約1ヘクタールの畑で砂里芋を栽培。
    4ヘクタールほどで作る生産者もいるそうだが、連作ができないため、最低でも倍の面積の畑が必要になる

この地で砂地栽培の里芋に力を入れ始めたのは平成17年のこと。聖籠町の農家、3人が始めた挑戦だった。小林さんはそのメンバーのひとりだ。「砂地で作るものはおいしいからということで始めたけれど、最初は全然相手にしてもらえなくて、価格も里芋の中でも最低でしたね」。JAの担当者から品質はとても良い、砂地で里芋を作っているのは全国的にも珍しいと励まされ、平成21年からは県外への出荷もスタート。平成25年に商標登録も行われた。
大きな転機は平成28年。JA北越後の神田太一さんは「テレビの満天青空レストランで砂里芋が取り上げられ、放送後の反響がすごかったと聞いています。それをきっかけに広く存在が知られるようになりました」と話す。

聖籠集荷場

なにより、一度食べると味の良さが分かる砂里芋。市場関係者に試食してもらうなどPRを続けるうち、評価は上がり続け、現在は里芋のなかでも平均単価が日本一というところまできた。小林さんは「価格は最初の頃の倍になりました。評価してもらえると、モチベーションが上がります。なにより食べてくれた方から“おいしかった”“また食べたい”という声が聞けることが、一番の張り合いになります」。

平均単価日本一の評価に応え続けるために

砂里芋の栽培シーズンは3月中旬、保存しておいた株から種芋を取る作業から始まる。春に植え付けをし、収穫は早いもので8月下旬からスタートし、11月下旬まで続いていく。株のまま掘り出すので、重さはひとつ約10キロにもなる。株は親芋を中心に子芋、孫芋が付いていて、柔らかい孫芋がA品。子芋も身が締まっているので型崩れしないという良さがあるそうだ。

  • 前年に収穫された種芋は、5~6℃に保ったハウス内で保存し、冬越しして春に植え付ける

  • 6月頃の砂里芋。葉は高さ1メートル位まで大きく伸びる。葉が大きいほうが、より日光をたくさん浴びて栄養を行き渡らせることができる

  • 7月下旬の様子。暑い日が続く夏はスプリンクラーでの水撒きが欠かせない

掘り上げた株は一旦並べて乾かした後、順番に株から芋を外して選別し、出荷していく。出荷は12月にピークを迎え、年明け後も4月ごろまで続いていく。

葉を刈った後、機械で株ごと掘り起こす。
ひっくり返して乾かした後、コンテナに詰め、トラックで運ぶ。1株約10kgもあり、作業は体力勝負だ

「ブランドとしての評価が高まると、今度は今のレベルを落とさないようにしなければ、という別のプレッシャーもありますね」と小林さん。現在、部会に所属している砂里芋の生産者は20名。全員が同じ品質で砂里芋を生産できるよう、栽培方法や肥料設計を共有し、初出荷の時期には毎年目合わせを行うなどして、産地としての努力を続けている。

  • 収穫した砂里芋は、日に当たらないように黒いシートをかけたり、もみがらをかけて保温したりと各生産者が工夫しながら保存。切り口から傷むため、芋を外すのは出荷の直前だ

砂地で育った砂里芋は一般的な里芋よりも皮の色が薄く、見た目の印象もきれいだ。皮も厚めなので、保存もきく。購入後に保存する際は、乾燥させないことが大事。暖かすぎても、寒すぎても傷むので、新聞紙にくるんで室内の暖房の入っていないところに置いておくのがいいそうだ。
代表料理はのっぺだが、シンプルに蒸かして塩をつけて食べたり、コロッケや煮転がしなどもおいしい、と小林さん。神田さんは「JA北越後としても、今後は地元・新潟の皆さんにももっと砂里芋を食べていただきたいと思っています。直売所などでアピールしていきたいと考えているところです」と話す。
栄養分が少なく、農業には不利な土地と思いがちな砂地の可能性を信じた人々の努力によって誕生した砂里芋。全国的にも稀有な砂丘地育ちの里芋は、これからさらにその評価を高めていくに違いない。

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JA北越後 さといも部会 部会長

小林(こばやし) 八寿夫(やすお)さん

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JA北越後 園芸振興課

神田(かんだ) 太一(たいち)さん

直売所で購入できます

JA北越後 農産物直売所
こったま~や

詳しくはホームページをご覧ください

お問い合わせ

JA北越後 青果物集出荷センター

〒957-0232
新発田市真野原外1644
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