春一番、カラダが目覚める“苦み”を味わう

『山菜』

雪解けと共に始まる旬

「春の皿には苦みを盛れ」のことわざがある。苦みのある春の食材といえば「山菜」。あのほろ苦さのもとになっているポリフェノールやアルカロイドは、代謝を促して体内の余分なものを排出してくれる、いわゆるデトックス効果を発揮。山菜を食べることは、寒さに耐えるために代謝機能を低下させて脂肪を蓄えるようになっていた冬の体を、春仕様にチェンジするきっかけになるという訳だ。
最近は栽培される山菜も増えてきたが、新潟では天然ものが豊富に出回る。JAえちご上越では、出荷される全ての山菜が、生産者が山に入って収穫してくるもの。多くが関東に送り出され、都会に春を届けている。

天然の山菜に沸き立つ季節

山々の雪解けが進むころ、山菜の季節が到来する。山菜の宝庫とも言われる新潟県だが、特に雪深い地域のものはアクが少なく、よりおいしく感じる。JAえちご上越では、平成23年から地域の人が収穫してきた山菜を集約し、関東の市場へ送り出している。山菜部門を担当している吉川太一さんは「上越エリアは平場から標高の高い山まであるので、山菜のシーズンが長いのが特徴です。例えばフキノトウは雪解けが早いと2月下旬から出始めますが、山の方では4月中旬にやっと採れるという感じです。自然のものなので、出荷できる量や種類が読めないのが栽培ものと違うところですね」と話す。
関東で人気が高いのはコゴミや山ウド、コシアブラ。特にコシアブラは年々価格が上昇しているそうだ。山菜採りをする人は地域で100人ほど。以前はもっと多かったが、コロナ禍に市場がストップし、売上が半減したのをきっかけに人数が減少。一方、売上は以前の水準に戻って順調に推移している。
牧区棚広集落の羽深ミイさんは、JAが扱い始めた当初から出荷を行っているひとり。実家がある山の麓と、標高400メートルの棚広地区で収穫を行っていて、主なものでフキノトウ、ノカンゾウに始まり、コゴミ、山ウド、ゼンマイ、ワラビ、ヒメタケ(ネマガリタケ)、ミズと続いていく。「畑より山に行く方が好き。冬至を過ぎて、日が伸びてくると〝もうすぐ春が来る〟と思って、もううれしくなるんです」と話す。

  • 「ほら、ここにも」と、ワラビ、ウルイ、ネマガリタケなど、多彩な山菜を次々に見つけて収穫していく

撮影に伺ったのは、昨年の5月。羽深さんの山ではコゴミが終わり、山ウドの収穫の終盤というタイミングだった。山ウドが生えているのは、昔は田んぼだったという土地。枯れたカヤをどけて、ウドの根元の土を掘る。「ウドは白い部分が多い方が価値が高くなります。白いのは日に当たらない部分なので、掘らないといいものが採れないんです」と吉川さんが教えてくれた。ある程度掘ると、手で折り採るように収穫。このとき、鎌などの刃物を使ってはダメなのだという。「金属に触れると株が弱って、細くなってしまうんです。もし知らずに使って採ろうとする人が居たら、このあたりの住民の皆さんは注意すると思いますよ」と羽深さん。自然と共存してきた知恵がそこにある。

  • 斜面には山菜が自生し、かつて棚田だった頃の名残が残る羽深さんの山

  • ウドの根元を丁寧に掘る。「株を移植してみたこともあるけれど、うまく育たたない。だから、いまある株を大切にしないといけないんです」と羽深さん

  • 熊鈴をつけ、電動自転車で山道を駆け上がる羽深さんは今年68歳。急な斜面もすいすい上っていく身軽さに取材班一同驚愕

上越の山菜は99パーセントが東京の市場へ

収穫に一番気を使うのは、実はコゴミ。クセがなくて食べやすい人気の山菜だ。柔らかいので、収穫後に日に当たるとすぐにしおれて黒くなってしまうのだという。羽深さんは手折ったものを残雪の上に置いて余計に触らないようにするなど扱いにも気を遣う。「コゴミが出るようになったら、夜明けと共に山に行きます。気温が上がる日中は作業できないですね」。
収穫された山菜は、出荷施設に集約され、種類ごとに手際よくパッケージングが行われる。毎日10時ごろに届き、東京に向かって出荷されるのが12時から13時ごろ。入荷がピークになる4月半ばからは目の回るような忙しさだという。毎年、2月には出荷者に向けて説明会を開催し、形や長さ、扱い方などについて周知するという。「ワラビは輪ゴムで止めるとそこから黒くなるのでNGとか、この山菜はこの大きさで採ってほしい、ということをお伝えします。生産者さんのご協力があって、出荷作業がスムーズに進みます」と吉川さん。こうして、関東へ新潟の春の味が届けられるという訳だ。

集荷場に集まった山菜。出荷のピークは4月中旬から5月上旬

  • 山菜の食べ方を知らない人のために、アクの抜き方など「おいしい食べ方」を同封する配慮も

羽深さんが好きな山菜はコゴミ。採りたてをすぐに味わえて、旬を感じるからだという。「毎年、弟のところに〝初物が採れたよ〟とダンボールいっぱいに送ると大喜び。茹でて、ニンジンとカニカマを合わせてゴマ油とめんつゆで味付けして食べるのがおすすめです」。
山にはとても立派なウルイも生えていた。「このあたりでは、ユウガオではなくウルイを干して作った山かんぴょうで、恵方巻を作るんですよ」と聞いて、びっくり。山に暮らす人々の知恵には驚かされることばかりだ。自然の力と、山菜採りのご苦労に感謝しながら、今年もほろ苦さと香りで春を感じたい。

  • 園芸拠点集出荷施設

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牧・棚広地区出荷者

羽深 ミイさん

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JAえちご上越
販売課

吉川 太一さん

お問い合わせ

JAえちご上越

〒943-0817
上越市藤巻58-1
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FAX:025-526-1181

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