キーワードは “ 米・麹・発酵 ”

八海醸造株式会社

新潟を代表する銘酒「八海山」の醸造元である八海醸造。今年創業100年という節目を迎え、その事業は日本酒だけにとどまらず、「米・麹・発酵」をキーワードに次々と新たな展開を見せている。観光地として人気が高まっている「魚沼の里」、そして北海道ニセコにグループ企業としてオープンしたウイスキーの蒸溜所など、魅力的なコンテンツを生み続ける同社の歩みの背景を南雲社長に伺った。

  • katuryoku-img

デジタル時代であるほど求められるのはリアルな体験

大正11年に創業した八海醸造は、今年100周年を迎えた。代表銘柄の「八海山」は、淡麗でバランスのいい食中酒として多くのファンを獲得。レギュラー酒が売り上げの7~8割を占めていて「日常消費材としての清酒八海山で会社は成長してきました。いつでも、どこでも、だれもが飲める高品質なレギュラー酒を造る、という目標のもとに歩んでいます」と南雲社長は語る。

代表取締役

南雲(なぐも) 二郎(じろう)さん

本社外観

同社の基礎を築いたのは2代目である社長の父と、父を支えた仲間たちで、彼らが八海山の味を造り、全く酒が売れないところから営業を重ね売上を伸ばしていったという。そのレジェンドたちから、南雲社長は経営の大切なことも受け継いだ。「これで大丈夫と思った瞬間から何事も終わっていきます。上手くいっているときほど将来への危機感を強くして何かをやらないといけない。そういうことに長けている人たちでした」。
現在の日本酒市場に目を向けると、平成元年は750万石(一升瓶で7億5,000万本)だったものが、平成30年には300万石に減少。「日本酒は、日本市場では確実に縮小していく。そのなかで会社を維持していくには日本酒以外への展開も必要です。そこで“米・麹・発酵”をテーマに、麹甘酒をはじめとするものづくりを手掛けています」。

  • 世界中の酒の中でも、複雑な工程と高度な技術を要する日本酒。
    加工技術とは目指す品質を具現化する力。それこそが存在価値だと南雲社長

  • 酒造りに欠かせない麹づくりの技を生かし、
    誕生した「麹だけでつくったあまさけ」

そんな同社のものづくり、技術に触れることができるのが「魚沼の里」だ。7万坪という広大な敷地に、日本酒や食品を貯蔵する雪室を始め、クラフトビール醸造所やレストラン、菓子工房などが点在。雄大な自然の風景を眺めながら、五感で「八海山」の故郷を感じることができる。「デジタルの情報があればあるほど、リアルな体験が必要になってくると、僕は思うんですね。強みを生かしたものづくりをして、ここで現場を感じていただけたらと思います」。
また、これからの日本は観光産業がポイントになってくる。八海醸造の地元である旧城内(じょうない)村地区に観光への投資をすることは、将来的にチャンスが広がるとも話す。「魚沼の里は関東から近く、関東から新潟市まで出かけた人が帰りに立ち寄れる立地。手つかずの自然環境が残った土地だったことで、魅力ある場所をつくっていけていると思っています」。

  • 八海醸造の柱は銘酒「八海山」。食事と共に楽しめる淡麗ですっきりとしたおいしさを追求している。
    「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」は、雪室で熟成され、まろやかに育った数量限定品

八海醸造の本社からほど近い丘陵地にある「魚沼の里」には、さまざまな施設が点在。
「八海山雪室」では、雪室や米焼酎の熟成樽などが見学できるほか、試飲コーナーもある

新スポット、ニセコで発信する新潟

本業である日本酒については、インバウンド市場と海外輸出への展開を見据える。アメリカを中心に輸出を行いつつ、ニューヨークの酒蔵と業務資本提携を行い、技術提供を行っている。「お酒はその国の人が、ほれ込んだ外国文化を伝えようと創業することで、その土地に浸透していくもの。ニューヨークを拠点に海外で日本酒文化が定着していくことに期待しています」。

  • 業務資本提携を結んだニューヨークの酒蔵から、八海醸造へ技術視察

令和3年秋には北海道ニセコ町にウイスキーを造るニセコ蒸溜所をオープンし、周囲を驚かせた。実は数年前から、米ウイスキーを手掛けていた同社。一方で南雲社長は人から「世界から人と資本が集まる、世界に通用するリゾートというものを絶対に見ておいたほうがいい」と勧められたのをきっかけに、10年以上前からニセコに足を運び、リゾート地への学びを得てきた。そしてウインターリゾートであるニセコの無雪期の観光資源となるべく、蒸溜所をオープン。「ニセコの気候がウイスキーの長期熟成に合うんです。世界から人が集まるニセコに拠点があれば、インバウンド市場や輸出を目指していく我々にとっても、可能性が広がると思っています」。

  • ニセコにオープンしたニセコ蒸溜所からウイスキーを送り出す。
    熟成期間を経て、最短で2024年からの販売を見込んでいる。
    同所の第一弾商品としてはクラフトジン「ohoro GIN」を販売中

ニセコ蒸溜所のショップでは、燕三条で造られている金属加工品なども紹介している。「燕三条には日常品として造られてきたものが、その技術が磨き上げられて芸術的なレベルになっているものがたくさんあります。キセルを始め、そうした製品を好む外国人は多いんですね。もしかすると、製品に惹かれて、ものづくりの現場を見たいといって新潟に来てくれる人もいるかもしれない。日本酒も含め、新潟、日本の文化を紹介することも、何かの力になれるのではと思っています」。こうしたさまざまな展開も、全ての原点は南魚沼にあり、日本酒にある。それこそが同社が前進し続ける原動力だ。

「魚沼の里」の一番高台にある猿倉山ビール醸造所からは、
開放感あふれる眺望とともに、ここで造られるクラフトビール「ライディーンビール」が楽しめる

お問い合わせ

八海醸造株式会社

本社外観

本社外観

〒949-7112
南魚沼市長森1051
TEL:0800-800-3865
 (代表:平日のみ)

読者プレゼントがあります。
応募フォームからご応募ください

応募は終了しました