日東成工株式会社
新潟市北区にある日東成工株式会社は、樹脂加工メーカーと防水工事を手掛ける建設工事業というふたつの顔を持つ会社。近年は飛沫防止パネルや止水板といった、いまのニーズに合った商品の販売も手掛け、好調な業績を上げている。昨年10月に経営のバトンを受け取った2代目社長が、創業者から伝えられた言葉は「好きにやっていいぞ」。のびやかに次なる成長を目指して進む日東成工に注目だ。
精密部品製造から田んぼの水路補修まで幅広く
日東成工は昭和63年に現会長が設立した、創業から36年の会社だ。柱となっている事業がふたつある。ひとつが樹脂加工で、半導体を製造するための装置を作っている。樹脂は薬品に強く、製造する際にさまざまな薬品を使用する半導体の装置には、素材として向いているそうだ。同社は小さな精密部品から躯体まで製造し、部品の組み込みまで手掛けている。「1枚の材料板の加工から、ひとつの装置の完成まで一貫対応できるのが強みだと思います。工場が広くてクレーンもあり、大型の装置も作れるので、新潟から関東や関西へも出荷しています」と石田忍社長は話す。
代表取締役社長
石田 忍さん
本社と併設の工場
もうひとつの柱が防水工事。付き合いのあった樹脂加工メーカーが、新たに防水材料を発売したことが取り組むきっかけだった。現在は建物の防水施工だけなく、鉄道の高架のコンクリートの修繕や、田んぼに水を引く土地改良区の水路の補修も行っている。「水路も長く使っていると水が漏れてくるので、定期的に補修が必要です。冬場の仕事なので現場は寒さが大変ですが、新潟のお米のために頑張っています」。農業関連では、樹脂加工部門も水耕栽培システムの水受け(樋)を手掛けたことがあるそうだ。
新型ウイルス蔓延の時期には樹脂加工技術を活かして、飛沫防止パネルを製作して供給。東京での感染予防対策の話を聞いた石田社長は、新潟でも必要になると考え、すぐに動いたという。
一枚の樹脂の板から部品や躯体が作られていく
切削加工する機械(NCルーター)で大小さまざまな形を作り上げていく
防水工事から派生した仕事としては、工場などの屋根を吹き付ける工法でコーティングして断熱性を高めるものや、太陽光発電のソーラーパネルの設置前に防水工事を施すといったものも行っている。酷暑が続くなか、屋根への断熱工事は需要が高い。また、ゲリラ豪雨などによる浸水を食い止めるため、自動ドアなどに取り付ける止水板の販売も行っていて、銀行や精密機器を扱う会社に納入しているそうだ。
台風や豪雨による浸水を防ぐ止水板「フラッドセーフパネル」。
ATMなど精密機器を設置している金融機関などでの導入が進む
こうした販売代行の商品は、石田社長が見つけてきたもの。「通常業務に加えて何かやりたいと思って、情報を集めてメーカーを探しました」。
実は暮らしのどこかで関わりがある日東成工
同社では、営業社員も社長も直接クライアントとやりとりをしている。経理を担当してきた石田社長も金融機関など独自のルートで販路を開拓してきた。「顔を合わせてお客様の困り事、要望を伺って、それを解決できたとき、力になれたという実感があります」。日頃の信頼関係もあり“日東さんが扱っているなら、ソーラーパネルを設置するとき屋根の防水をお願いしようかな”という感じで仕事が繋がっていったそうだ。
太陽光パネルを設置する前にお勧めしているという防水工事。
断熱の効果もあり、SDGsや冷暖房コストの観点からもニーズが高まっている
社長に就任して最初の決算で、売上は目標だった20億円を達成。社員の頑張りが数字に表れていることも実感していて、今期は賞与の回数を増やすなどして還元している。「私がやりたいといったことについて、会長は思うようにやらせてくれたので、私も社員にはいろいろアイデアを出してもらいたいと思っています」。
社長が入社した当時はまだ社員数は少なく、和気あいあいとしたなか「これから皆でがんばるぞ」という雰囲気だったそうだ。現在は従業員が50人ほどまでに成長。そして、樹脂加工は手作業が多く、透明な素材であることもあって丁寧な仕事が求められるが、そうしたシーンで活躍しているのが、女性のパート従業員たちだ。社長からはスイーツや、手荒れ防止のプロ用ハンドクリームをプレゼントして感謝を伝えているそうで、社内の和やかな雰囲気は変わっていない様子だ。
樹脂加工は意外なほどに手作業が多い。女性パート従業員をはじめ、丁寧な仕事が高い品質を守っている
同社が作る半導体製造装置で生産される半導体は、暮らしをさまざまな場面で便利にしてくれていて、いつも利用する銀行ATMには同社が納めた止水板が備えられているかもしれないし、多くの人が利用する鉄道の高架も守ってくれている。実は私たちのすぐ身近で活躍している日東成工だ。
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