亀田郷の風景を仲間と守る

農事組合法人カミハヤ

新潟市・旧亀田町エリアで米づくりを手掛けるカミハヤは、それぞれが米農家の跡継ぎという幼なじみの3人で立ち上げた法人だ。力を合わせることで、安心して地域の人々からの栽培委託を受けることができるようになり、栽培面積も大幅に拡大。「自分たちが育ってきた亀田の田園環境を守っていきたい」。先人たちが大切にしてきた亀田の農地は、若者たちの手で未来へと受け継がれていく。

  • 左から坂上さん、代表理事の鷲尾さん、杉本さん

「いつかは3人で」という夢を実現

周囲一面に田んぼが広がり、その先に白くビッグスワンの姿が見える場所に、カミハヤのライスセンターはある。長閑な眺めを前に「子どもの時から見てきた風景は無くしたくないですよね」と、鷲尾代表は話す。

ライスセンター

江南区の旧亀田町エリアを中心に、62ヘクタールの水田と、5ヘクタールの大豆畑を手掛けるカミハヤは、鷲尾さんと同級生の坂上さん、1歳下の杉本さんの3人が役員を務めている。3人は保育園から中学まで一緒の幼なじみで、全員が米農家の跡取り。就農した時期もほぼ同じだ。「それぞれの家が農機や施設を持って、それなりに広い面積で米づくりをしてきましたが、父親とふたりでやっていて、将来ひとりになった時に維持していけるのかという思いがそれぞれにあって、“いつかは3人で一緒にやれたらいいね”と話していました」。

  • 収穫を控えた大豆畑で除草作業。大豆は地元の農業法人から管理委託を受けて栽培している

いざ、父親たちに話しを持ちかけると、最初は反対する家もあり、説得するまでには5年余りを費やした。鷲尾さんは「父たちの気持ちも分かるんです。団塊の世代で、頑張って土地を増やしてきて、息子が継いで、ここからやっと少し楽ができると思ったら、まだ経験も浅い息子たちが集まって何か言い出したんですから。心配もあったでしょう。でも、将来を考えると法人化は不可欠だと思いましたね」と振り返る。
鷲尾さんたちは、県の普及センターや農機センターに相談しながら、自分たちも法人化のための勉強をし、いわば外堀を埋める形で説得。平成28年に法人登記し、その年の9月からライスセンターが稼働した。「竣工式には父たちも来てくれて、周りの人がこんなに協力してくれるなら、息子たちでもやれるだろうと思ってくれたみたいです」。
法人化して得たのは、一緒に事業をやっていく仲間がいるという安心感。個人でやっているときは水田の委託生産を依頼されても、受け入れて大丈夫かという不安が大きかったが、いまは躊躇なく預かることができる。栽培面積は当初の43ヘクタールから20ヘクタール近く増えた。
また、栽培方法についても、各家の良いところを持ち寄ることで技術が向上。他に引けをとらない収量、品質を確保できている。

  • 「実は、鷲尾は3人のなかで一番農業をやりたくなかったんですよ。
    杉本と私は農業高校に進んだけど、鷲尾は普通科ですから。それが代表になりました」と笑う坂上さん。
    長い付き合いで気心知れた仲だからこそ、本音で話し合える3人だ

これからの世代が付いてこられる農業を

カミハヤが目指すのは、皆が毎日安心して食べられるお米を、安心できる価格で提供していける農業。「ものすごく付加価値があるというものよりも、日々安心して楽しんでもらえる米を作っていきたい。栽培面積も広がってきましたが、この広さでも平均より上の品質のものを作っていけるように頑張っています」。
栽培している水稲はコシヒカリや新之助、こしいぶきをはじめ、8品種。これだけ多くの品種を手掛けているところは、そう多くない。「米は早生から晩生まで全部が良く育つ年というのは、まず無いんです。我々は米に特化しているので、品種を分けることでリスクを分散しています。毎年9月1日から約1か月かけて稲刈りをしていると、収穫しながら“今年は早生がいいな”とか、品種による出来不出来が分かりますね」。

米の輸出を手掛けているグループから声をかけてもらい、2年目から台湾へ輸出もしている。
一般向けには亀田にある直売所の「大地」で、「新之助」を販売

もうひとつ、仕事をする上で工夫しているのが、作業の効率化。例えばゴールデンウィークに少しは休んでも大丈夫な状況にするためには、田植えにかかる時間をどう短縮していくか、といったことも考えている。その背景にあるのは、自分たちの後に続く世代のことだ。「来年から、初めての従業員がひとり入ってくれます。これから農業に就いてくれる人たちが、付いてこられないような作業のやり方ではいけないと思うんです。自分たちも少しは楽をしたいですしね(笑)」。

  • 10年後を見据えた「経営理念」

設立からまだ6年。これからさらに栽培面積を広げていきたいと考えている。「地元の農地を守っていきたいというのが一番の目標。ここから見渡せる田んぼで100ヘクタールくらいあるのですが、それくらいを栽培できる力が付いたら、その目標を叶えていけると思います。将来は麦の栽培もやってみたい。少人数で大きく収穫できる農業を目指していきたいと思います」。

お問い合わせ

農事組合法人カミハヤ

〒950-0168
新潟市江南区早通992
TEL:025-381-3798 
FAX:025-381-3798

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