有限会社花プラン
新発田市にある国内有数のバラ専門農園「花プラン」は、多彩な品種のバラの切り花と苗木の生産・販売を手掛けている。創業者である父から経営を受け継いだ2代目の富樫淳社長は花業界の厳しい変化を感じながらも「バラは花の中でも特別な存在。それに携わっていることは誇りでもあり、続けたいし残していきたい」と、新たな展開に挑みながら、バラで拓くさらなる可能性を追求している。
写真後列中央:代表取締役 富樫 淳さん
バラ農家から直接届くブーケが好評
花プランは昭和47年の創業以来、バラだけを生産する農園として歩み、大小合わせて9棟のハウスで、切り花を年間60万本、苗を30万本生産。苗は日本全国のバラ農家に納められている。
切り花用のバラは蕾のふくらみ具合を見ながら切っていく。
暖かい季節には朝と夕方の2回収穫する
バラ農家向けの苗は売上全体の6割ほどを占める
花プラン創業者である富樫康雄さんは、切り花用バラ栽培技術の主流であるアーチング栽培を共同開発したひとり。富樫淳社長は、バラ栽培に決して向いているとは言えない雪国・新潟だからこそ、技術向上に情熱を傾けてきた父の仕事を継ぐなかで、日本におけるバラ生産業界においての使命感も感じているという。「私が就農したのは20年前ですが、その頃から輸入切り花が増えてきたあおりもあり、後継者がいなくて辞めるバラ農家が増えています。生産者が減れば苗の需要も減り、苗農家も淘汰されて、いま国内では当社のほかに2、3件あるのみです。バラは花のなかでも特別な存在。それに携わっていること、しかも地方の雪国でやっていることの貴重さもありますし、これからも続けて次代に残していきたいと思っています」。
冷蔵庫には切りたての色とりどりのバラの花が出荷を待つ
切り花のバラは、やはり祝い事でのニーズが高い。以前は結婚式シーズンなどに合わせて生産の山を作っていたが、最近はなるべく1年を通して平準化させている。「イベントに使われる花は、災害などの不意のトラブルが起きた時、一瞬にして需要が無くなります。そのリスクを分散させる意味もありますね」。
それに伴って増やしてきたのが直接販売。現在は近隣の直売所やスーパーのほか、新発田市のふるさと納税の返礼品にも採用されている。さらに、販売を伸ばしているのがインターネット通販だ。バラ農家から直送されるバラのブーケということで、鮮度が良いうえ、価格もお得。「インスタグラムで紹介すると、〇月〇日に投稿されているようなブーケを、と注文がありますね。面白いのは、市場出荷ではあまりニーズがない、くすんだ色や紫色などのバラがネットではよく売れること。プロポーズ用に、レストランや旅館に届けてほしいという依頼もあります。若い人たちが人生の大切な節目に花を使ってくれるのは、とてもうれしいですね」。
花瓶付や本数指定など、要望に応じたブーケに対応。
ネット注文できるミックスのブーケには、市場に出ていない新品種のバラが入ることもあるそうだ
人気が高まってきているというドライフラワー。きれいに咲いたバラを無駄にせず活用できる側面もある
IoT技術も活用。花卉園芸の未来を模索
また、農園ではハネ出しのバラを格安で販売。それを目当てに来店する人もいる目玉商品だ。こうした直接販売の機会は、従業員にとって仕事のモチベーションにも繋がっているという。
苗は毎年新しくデビューする品種を仕入れ、秋にセールスに回り、その注文に応じて冬に芽を接ぎ木し、約2ヵ月育てて出荷される。
強い株に育てるための「接ぎ木」は一つずつ手作業だ
このように施設園芸は、冬に燃料を使っての暖房が不可欠で、自然環境に負荷をかける仕事であることも気にかけている。「環境重視の未来においても、こうした園芸が社会的に許されていくのかという不安もあります。とはいえ、いまは現状のやり方を続けるしかない。だからこそ、電気やLEDを使った栽培技術の進歩にかける期待は大きいです」。
バラは湿度が高くなると病気が出やすくなるので、湿度管理がとても重要だ。花プランでは、事務所から離れた場所にある温室の管理をデジタル化。手元のスマホで温室内の温度や湿度の数値を把握し、必要に応じて湿度を下げるための操作を行うことができる。「行って作業をしてくると移動時間を含めて1時間くらいはかかってしまうので、それを手元でできるのは効率的です」。
アグリネットというシステムを使い、温室の湿度調節をスマホで遠隔操作
今後は切り花のさらなる販路拡大のための工夫も考えたいという富樫社長。「いまはバラしか作っていないので、ブーケもバラだけ。花屋さんが作るブーケのレベルに近づきたい思いもあるので、バラ以外のグリーンや花の栽培も始めようと思っています」。また、月岡温泉を訪れる観光客をターゲットに、自分でバラを収穫してブーケを作るといった体験型商品もやってみたいと話す。「単なるブーケづくりだけでなく、農家ならではの体験を提供するなどして、花を楽しんでくれる人の裾野を広げていきたいと思います」。
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〒957-0021
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