農業を勇気づける存在に

エンカレッジファーミング株式会社

新潟市西蒲区越前浜の砂丘地に建つ、県内最大の温室。ここはエンカレッジファーミングが平成29年にオランダから導入した環境制御型栽培ハウス、いわゆる植物工場だ。生産環境がコンピュータ制御されたなかで、通年栽培されているのはミニトマト。「農業を変えたい」そして「トマトで人々を健康に」という思いから始まった挑戦は、これからの農業のひとつの形を示している。

  • 写真右:代表取締役 近藤 敏雄さん

環境制御型栽培ハウスをオランダから県内初導入

「H&Bガーデン」と名付けられた全面ガラス張りの巨大温室に入ると、鮮やかな緑の葉を茂らせたトマトが、明るい陽射しの中に整然と、はるか奥まで並んでいた。ハウスは幅が約100メートル、奥行き200メートル、高さは6.7メートルもあり、ところどころに作業を行っているスタッフがいるものの、その広さゆえにハウス内はとても静か。時々、羽音をたててミツバチが飛んでいく。
近未来感漂うこのハウスは、エンカレッジファーミングが、植物工場の先進国であるオランダの施設、技術を新潟県内で初導入したもの。農作物は養液栽培されていて、温度、湿度、陽射し、水分、肥料は制御システムで管理されている。

  • ハウス内の面積は約2ヘクタール。
    土が使われていないため防除を減らすことができ、
    より安全で安心なミニトマトを提供できる

  • 新潟の気象データに基づいてコンピュータが適切に環境を管理しているが、データの微調整や成長過程のチェックなどには人の目も欠かせない

同社は鈴木農園(新潟市西蒲区)の子会社として平成25年に創業し、苗生産をスタート。翌年からミニトマトの栽培も始めたが、病気や虫害に悩まされることになる。もともと「農業のやり方を変えたい。もっと作業を効率よくすることはできないのか」と考えていたという近藤社長は、情報を集めるなかで欧州の植物工場を知った。「先進国のオランダではこの10倍くらいの規模の植物工場が標準。雪が降る新潟で通年のハウス栽培は上手くいかないという声がほとんどでしたが、示されたデータを見て、いけると確信して導入を決めました」。導入費用は12億円。半分は農林水産省の「産地パワーアップ事業」の助成を受けたものの、それでも莫大な投資だ。手探りだった1年目こそ赤字だったものの、2年目からは黒字に転換。従業員の働き方も変わり、休みもしっかり取れるようになった。「辛い、きつい、儲からないという農業のイメージを覆したい」という近藤社長の思いは、しっかりと形になってきている。

昇降機で高所も負担なく安全に作業。
H&Bガーデンでは、社員、パート合わせて70名近くが働き、地域の雇用創出にも貢献している

栽培は苗を1月に植え、2か月後から収穫がスタート。そのまま12月下旬まで育てて収穫を続ける「夏越し作」を実施。停電などのリスクはあり、技術も必要で国内では行っているところは少ないが、ほぼ1年を通して収穫・出荷できるのがメリットだ。5月から6月が最盛期で、多い時には1日に4トンを収穫。いまは年間400トン生産を目標に置いている。

ミニトマトで健康と美を届けたい

同社では規格外トマトを有効活用するため「トマトダイニング」というブランドを立ち上げ、加工品の製造販売も手掛けている。トマトのカステラやドーナツといったスイーツから始まり、ドライトマトを使った炊き込みご飯やラーメン、カレーなどの商品を開発。全国各地のこだわり食材を扱う店舗などで販売されている。また、新潟薬科大学応用生命科学部と連携し、学生と共にトマトパウダーを練り込んだ「トマトうどん」を開発。商品化に向けた取り組みを進めている。
ハウス導入の際、作物を何にしようか悩んだ結果、ミニトマトを選んだのは栄養価が高い健康的な野菜だという観点からだった。「トマトには抗酸化作用などがあり、我々が作ったミニトマトを食べて、ぜひ体の内側から健康で美しくなってほしいと思っています。その思いを込めて、ハウスの名前H&Bは、ヘルスとビューティの頭文字なんです」。

  • H&Bガーデン

  • ミニトマトは県内外のスーパーへ、炊き込みご飯の素やトマトのオイル漬けなど
    「トマトダイニング」の商品は県内外のスーパーやセレクトショップで販売されている

ミニトマトはJAや提携先のスーパーや事業者などに出荷。また、岡山県でH&Bガーデンの10倍の規模を手掛けている生産者と協力体制を組み、関東方面の市場への出荷も担っている。県内のスーパーでは「H&Bプレミアム」の商品名で販売。ちなみに同社のミニトマトはすべてヘタ無しで出荷。諸外国はそれが主流で、今後は国内でも増えていくのではと近藤社長は話す。

  • 養液は苗の根元に注がれ、余剰分はパイプを通ってまた集められ、
    消毒して再利用される

選果機で規格ごとに分けられたあと、パッキングマシンへ。
収穫ロボットの実証実験も行われるなど、省力化が図られている

社名にした「エンカレッジ」という単語は「勇気づける、励ます」という意味。最先端技術の導入を成功させることで、新潟の農業を勇気づけることができたら、という近藤社長の思いが、この名に込められている。「何より一番はお客様から喜んでもらえる商品づくりをすること」と近藤社長。今後は同じ規模のハウスをもう一棟作りたいと、さらなる展開を見据えている。

野菜や花の苗を約260万ポット生産。ハウスの中には多種多様な苗がずらりと並ぶ

お問い合わせ

エンカレッジファーミング株式会社

〒953-0015
新潟市西蒲区松野尾468
TEL:0256-78-8920(ミニトマト)
TEL:0256-72-5778(野菜・花苗)
FAX:0256-73-3257

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