緑輝く「わかとち」の地で

株式会社 Mt.ファームわかとち

小千谷市の山間地にある若栃集落。標高200メートルの棚田で穫れる米や、山菜などの山の幸が魅力のこの土地で、Mt.ファームわかとちは平成28年に誕生。中越地震で傷ついた地域が再び元気を取り戻すため、集落の人々は自分たちで若栃の未来を考えていった。令和4年度には農林水産祭でむらづくり活動「日本農林漁業振興会会長賞」を受賞。その活動はしっかりと実を結んでいる。

  • 写真右から2番目:代表取締役 細金 剛さん

雪解け水に育まれる棚田が一番の強み

Mt.ファームわかとちは小千谷市真人地区、あちこちに棚田が見える若栃集落にある。平成22年に前身の生産組合が立ち上がり、平成28年に株式会社化。自慢のコシヒカリの栽培を中心に、餅や山菜惣菜などの加工品の生産販売、民宿「おっこの木」の運営なども手掛けている。集落農業を守り、若栃のおいしい米の魅力を認知してもらうことが会社の役割。「ここの米は本当にいいですよ。良く出来た年の米はつやつやでもちもちして、甘みが強くておいしい。標高があるので昼夜の寒暖差があることや、きれいな雪解け水があること。これは他には真似できない強みです」と細金剛社長は話す。

受託を含めて15ヘクタールの田んぼを管理している。棚田には土に染み込んで自然濾過された雪解け水が流れ込む

会社が生まれるきっかけは平成16年に起きた中越地震だった。家屋や農地に多くの被害があり、翌年には小学校が廃校に。「地震以降、お年寄りとかみんな元気が無くなってね。これは地域をなんとかしないといけないということで、若い人から年寄りまで30人が集まって、わかとち未来会議という組織を立ち上げて動き出したんです」。
ワークショップを重ね、若栃の未来像をみんなで考え、地元の魅力を再発見し、グリーンツーリズムの受け入れをするなど、発信と交流を進めていった。なかでも農産物の生産・販売については、収益の確保やブランディングのためには持続性が必要ということで事業化を進め、Mt.ファームわかとちが誕生した。

わかとち未来会議と連携して、小中学生の農業体験、民泊の受け入れなどを行っている

  • 事務所外観

  • 令和四年度農林水産祭でむらづくり活動
    「日本農林漁業振興会会長賞」を受賞

近年はふるさと納税の返礼品として、同社の米を選んでくれる人が増えていることに大きな手ごたえを感じているというのは息子の創さんだ。「若栃の自然環境を見て関心を持ったという方、味で選んでいるという方もいると思うのですが、小千谷市の返礼品のなかでも特に多く選ばれていたりするんです。小千谷市の税収に貢献できている感覚もあるし、地域の農家のお米が評価されているということなので、生産者の皆さんにそれを伝えると喜んでもらえる。そういう意味では当社が二重に貢献できているかなと思いますね。だからこそ、去年の米作りは本当に厳しかったです」。

等身大のわかとちを知ってもらえる「おっこの木」

昨年の記録的猛暑は若栃の米作りにも大きく影響した。田んぼの多くは山の沢の水を引き込んでいるため、水が確保できなくなり、稲が枯れていく様を見ているしかなかったそうだ。「生まれて初めての経験だった」。細金社長はそう振り返る。例年とは違う品質に厳しい声も届いたが、「来年を楽しみにしているから頑張って」と言ってくれる顧客もいて、励まされているという。
付加価値を付けて販売していく米という意味では、同社のトップブランドはコシヒカリの従来種のはざ掛け米。「高価格帯になるのですが要望も多いので、希望される方に向けて発信していきたい。昨年それが叶わなかったのは痛かったです」と細金創さんは話す。
一方、環境リスクも大きい地域だからこそ、複合体でやっていることでメリットも生まれている。地元の山菜で作る漬物や惣菜や餅、民宿があることで、米が振るわなかった分をカバーできているそうだ。

  • 地域の人が収穫してくる山菜や地元の野菜を使った漬物、惣菜も人気。
    餅も評価が高く、若い世代や女性には、玄米もちや黒米もちが好評。
    今後はフードロスの観点からくず米の加工品も検討中だ

農家民宿「おっこの木」は慶応3年(1867年)に建てられた古民家で、地元のお母さんたちが手作りのごっつお料理でもてなしてくれる。関東圏からの旅行者が中心で、一度訪れるとファンになってリピートする人も多いそうだ。細金社長は等身大のわかとちを知ってもらえる場所だと話す。「田舎のおじいちゃん、おばあちゃんの家にきた気持ちになれるとか、時を忘れさせてくれる場所だ、という声が多いです。朝からごはんを3杯もおかわりする人もたくさんいますよ。自分の故郷に帰ってきたように過ごしてもらって、思い出が出来て、ここが特別な場所になってくれたら。そして帰ってからも我々の米を食べてもらえたらうれしい」。
「“わかとち”の名前をしっかりPRしていきたいんです」と語る細金社長の言葉に、若栃集落を愛する思いがこもっている。

  • 毎月発行している「わかとちじかん」。若栃のことを知ってもらおうと商品に同封している。
    ホームページのコラムからも読むことができる

「おっこの木」は築160年。2016年に国の登録有形文化財に認定された。春から夏は予約がいっぱいになる

お問い合わせ

株式会社 Mt.ファームわかとち

〒949‐8726
小千谷市真人町戊378-1
TEL&FAX:0258-82-1410

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