地元の米で育つ村上牛

株式会社Santaふぁーむ

村上市荒川地区にあるSantaふぁーむは、村上牛の生産農場だ。牛を飼育するために欠かせない粗飼料と呼ばれる藁や牧草を自社生産し、繁殖も手掛けながら、村上牛を市場に送り出している。創業者は日本一の牛を生み出し、村上牛の知名度を押し上げた世代のひとり。そして、いま2代目代表のもと、社員みんなで目指すのは、自社繁殖した牛での令和9年に行われる全国大会への出場だ。

  • 写真右:代表 三田 美明さん

周囲の畑で粗飼料となる稲や牧草を栽培

肥育牛100頭、繁殖牛40頭を飼育しているSantaふぁーむ。牛舎の周りの田んぼには、大きな白いロールが積み上げられている。
創業者の三田美憲さんは平成2年に牛舎を建て、本格的に肉牛生産を始めた。もともと、米づくりと牛は密接な関係がある。「この辺りは水はけが良いので、田んぼの土を改良するには堆肥が絶対に必要でした。稲わらを牛が食べて、堆肥を畑に戻して米を作るという地域循環が昔からあったんです」。
同社では藁や牧草の粗飼料は自社で賄っている。穂が付いたままの稲を刈りとり、ラップで巻いて発酵させるホールクロップサイレージも粗飼料のひとつ。田んぼに積まれていた白いロールがそれだ。食べるものは肉質の良し悪しに直結するだけに、こだわりも大きい。「発酵したものは消化もいいです。発酵物特有の甘い香りがあるのですが、3年間くらい牛が食べ続けるなかで、その香りが脂に移るんじゃないかな、と考えています」と代表の三田美明さんは話す。小麦に代えて使っているソフトグレインサイレージも、米を砕いて乳酸菌で発酵させた飼料だ。

  • 牛舎の周囲では牧草を栽培

  • フォークリフトで運んでいるのはソフトグレインサイレージ。
    ロールのなかで米を発酵させる

  • 生まれた子牛は母牛と一緒に過ごす。基本的に母牛のお乳で育てている。出産はいつも緊張感がある、と美明さん。
    「稀に逆子などのトラブルがある。生まれたときはやっぱりホッとします」

牛は出荷時に霜降り度合いなどによってランク付けされる。A4、A5ランクが村上牛となるが、Santaふぁーむでは、およそ九割がそれをクリアしている。
同社の歩みは村上牛のブランド化と共にあった。地域で牛の飼育が増え、平成8年に東京で行われた全国肉用牛枝肉共励会に、共同出荷していた仲間で8頭の牛を出品。そのほとんどが入賞し、さらに美憲さんの牛は最高賞となり、日本一の称号を得た。「たまたまうちだったと思うけれど、身近にチャンピオン牛が出たことは自分たちにもチャンスがある、と励みになったと思います」と美憲さんは振り返る。さらに販売してくれる問屋や肉店、行政などが支えてくれて村上牛はここまで来た、とも。「農家だけが頑張っても無理なんです。全国から見れば小さくて見えないような産地ですから、地域一丸となってやっていくことが大事だと思いますね」。

  • 牛の世話で大切なことは、毎日ちゃんと観察すること。「1頭ずつ顔も角も違うんですよ」と美憲さん

自社繁殖した牛で全国大会を目指す

2代目の美明さんは、東京・吉祥寺の精肉の名店「サトウ」で修行し、新潟市内でステーキ店を7年間経営。子どもが生まれたタイミングで実家に戻って就農した。やりたかったことのひとつが、経産牛の生産だ。「店をやっているときから、経産牛は美味しいと思っていました。産後の牛を半年ほど再飼育することで、アミノ酸が蓄積されて濃厚な旨みの肉になります。安定供給するには母牛を増やす必要があるので簡単ではありませんが、ゆくゆくは経産牛の自社商品ができたらという思いはあります」。
自社で繁殖を手掛けるようになった理由としては、子牛の価格が高騰し、利益を出すために必要に迫られたところがある。種付けや出産など手間は増えるが、若手社員たちが強い戦力になってくれている。「家が農家という訳ではなく、牛が好きで農業大学校で畜産を学んできていて頼もしいです。牛はロープ1本で捕まえるんですけど、女性社員もやります。かっこいいですよ」。

牛が好き、という若いスタッフも頼もしい

同社の村上牛や丸メンチカツはひらせいホームセンターのネットショップで購入できるほか、ふるさと納税の返礼品でも人気。「一番の楽しみはレビューで感想を読むこと。おいしかったとか、誰に送ったといった利用者の声が励みになります」。また、地域の人にも牛肉に親しんでほしいと、年に1回、地元限定で販売イベントも行っているそうだ。
今後の目標のひとつに掲げるのは、令和9年8月に北海道で開催される、全国和牛能力共進会の大会への出場。5年に1度開かれる「和牛のオリンピック」とも称される大会で、自社で育った母牛で種付けをして挑戦しようと考えている。「まずは新潟の代表にならなければいけないので、みんなで気持ちを合わせて頑張りたいと思います」。

丸メンチカツはステーキ店を営んでいた当時の人気メニュー。
ひらせいホームセンターなどで購入できる

  • 牛舎外観

お問い合わせ

株式会社Santaふぁーむ

〒959-3111
村上市長政595–1
TEL:090-7401-6889

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