有限会社百笑会
「百姓」と「笑」をかけた名前を持つ、長岡市の農業法人の百笑会。社名には「農業を通して人を笑顔にしたい」「おいしいお米を食べて笑顔になってほしい」という思いが込められている。会社として目指すのは、次代につながっていく農業。地域で生産と消費が回り、若者が楽しくやりがいを持って働ける。その理想に向けた農場経営に挑んでいる。
写真左から2番目:代表取締役 池田 治さん
若者が活躍できる農業法人を作りたい
長岡市で米と大豆の生産を手掛けている農業法人の百笑会。信濃川の西側の丘陵地や山地、その麓の平野に、約60ヘクタールの水田・畑があり、コシヒカリを主力に、新之助や酒米、そして大豆を栽培している。特徴のひとつが、米や大豆の多くを直接消費者に販売しているということ。秋に1年分の米を注文してもらい、必要分をお客様のもとへ定期的に配達、配送する「お米の預かりサービス マイライス」といった独自のサービスも行っている。また、大豆は新潟県醤油協業組合が県産大豆・県産小麦で作る天然醸造の生醤油「郷土の実り」の原料になっている。
会社設立は平成18年。もとは平成8年に地域の農家四軒で立ち上げた機械共同組合が始まりだ。そこに参加していた祖父の背中を見て育った池田社長は、自分も農業を志して農業大学校へ進学。その後、上越の農業法人に2年勤めた。「それまで農業は年配の人が多いイメージだったんですが、その会社は2代目に代替わりしたばかりで、20代の人が多かったんです。みんなで技術を競い合ったり、作業が終わってから海に泳ぎに行ったりして仕事が楽しくて。自分も法人を作って、若い人が働ける場を作りたい、という方向がそこで決まりました」。
当時、若い人に農業に入ってもらいたくても、地元の周囲に手本になるような農場が無く、学びを求めて青年会議所に参加。そこでさまざまな業種の若手経営者らと出会ったことで、経営についても多くの学びを得ることができたと振り返る。
少量だが枝豆も栽培しており、この日の作業は畑の水路づくり
現在の社員は40代と30代が2名ずつ、20代が1名。実家が農家ではなく、自ら職業として農業を選んだ人が多いという。就業時間は8時から5時と決め、作業計画をしっかり組むことで、仕事しやすい環境を作っている。
そして、経営者として重視しているのが、しっかり利益を上げていくこと。「会社として儲けが出て、社員や自分たちの生活が安定してこそ、農業を続けていける。その結果、地域の農業や田んぼを守っていくことにつながると考えています」。
生産者と消費者が地域で支え合う形が理想
同社で栽培したコシヒカリは「百笑会の米」として販売。米袋には、ちゃぶ台を家族が囲んでいる場面をイメージしたイラストが描かれている。「お客様に喜んで買っていただくには、やっぱり食べておいしい米であることが大切」と、食味にこだわった米づくりに重きを置いている。そのために大切にしているのが土づくり。海藻由来の成分を活かしたミネラル資材を使った、ミネラル栽培に取り組んでいる。
2009年にJGAP認証を取得。60ヘクタールのうち、35ヘクタールで稲作、25ヘクタールで大豆を栽培している。
毎週金曜日がマイライスの配送・発送日。精米・袋詰めをして届ける準備をする
さらに、精米の際に出る米ぬかと、大豆のくず豆を混ぜて作るペレット肥料を、農閑期である冬の間に製造。春に田んぼに散布し、自社で栽培したものを畑に戻す、循環型の農業も行っている。
同社が手掛ける田んぼのなかでも、少し標高が高い丘陵地の棚田は、周囲を森に囲まれ、脇に沢が流れるなど、とても環境のいい場所だ。この棚田の一部は、長岡市の老舗料理屋や航空会社の専用田んぼ、大学の調査用実験圃場として契約を結んでいる。こうした事業も、青年会議所に所属していた時代に培ったネットワークが、今に生きていると話す。「やはり、人とつながるといろいろな発見があると感じます」。
丘陵地の田んぼの脇には沢が流れ、豊富な水量を確保できる。生活用水が入らないため実験圃場としても最適な環境だ
山地の田んぼには水田センサーを設置。水位や水温をスマホでチェックできる
今後については、会社として存続していくためには、最低でも10人くらいの規模が必要だと考えている。「その人数分の利益を上げられる形を作っていくのが、これからの目標です」。そして、一番の理想は、地域の皆さんに存在を知ってもらい、買ってもらって、この地域で互いに支え合いながら歩む形だと話す池田社長。「それによって僕たちも農地を守っていけます。地域を見ると、昔はみんな屋号で呼び合って、知り合いばかりだったのが、だんだんと疎遠になって知らない人も増えている。地域のつながりを生むための一助になるような活動も、これからは考えていきたいと思っています」。
事務所・精米所 外観
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