地域社会と繋がる農業へ

農事組合法人あけぼのクラブ

新潟市江南区で米・大豆・きのこの栽培を手掛ける農事組合法人のあけぼのクラブ。親世代が作った育苗と機械の共同組合を平成31年1月に法人化し、地元を中心としたエリアの農地を手掛けている。昔は魅力を感じなかったという農業に「だからこそ何かあるかもしれない」と思い、継ぐことを決めたという立川喜彦代表。地域社会と積極的につながっていく農業を進めていきたいと、その先を見つめている。

  • 写真前列右:代表 立川 喜彦さん

嫌っていた農業に、逆に可能性を感じて

あけぼのクラブは、古くからの耕作地帯である亀田郷から横越地区の約48ヘクタールの農地で米と大豆を生産している。また、令和2年度からは育苗ハウスを利用して、冬仕事としてヒラタケとナメコも栽培。様々な農業支援ツールを活用するなど、新しいものも取り入れながらの運営に取り組んでいる。
「米づくりの方針は、必要なところに必要なものが届くようにすること。小売もありますがJAや事業者への出荷が主です。これからも農地が余っていくことを考えると、いつでもそれを受け入れられる体制でありたいですし、作業工程が増えることで耕作面積が制限されることがあってはならないと思っているので、手間がかかる作り方等は最小限にとどめるようにしています」。と代表の立川喜彦さんは話す。
立川さんは代々農家を営む家に生まれ、父の後を継いだ形だが、実は子どもの頃から農業をやるつもりは全くなく、看護師として働いていた。「柏崎で看護師をしていて、東京へ行くつもりで段取りしていた時に祖父が亡くなって、それをきっかけに地元に戻り、しばらくは看護師を続けていました。農業はすごく嫌いな職業だったんですが、考えるうちに、世間的に“儲からない”とか言われて、決して評判が良くない農業だけど、だからこそ可能性を感じて、何かあるかもしれない、と思い至りました」。

  • 管理している農地は合計約48ヘクタール。そのうち米は42ヘクタール、大豆が6ヘクタール

  • 昔は亀田郷でどじょう養殖が行われていたそうで、いまも生息。
    前身の共同組合のときからシンボルマークになっている

  • 収穫後の乾燥調製はJAに依頼

  • 米はコシヒカリを中心に「にじのきらめき」などの
    新しい品種も取り入れている

就農して10年余りが経ったいま、楽しく思うようになってきたと話す。気持ちが転換したきっかけのひとつが、県外へ出てさまざまな人と交流したことだった。
「数年前から意識的に、自分であちこち出かけるようになりました。法人を立ち上げてすぐコロナ禍になったこともあって、反動的にすごく動いたんです。他の人のやり方や状況を知るようになってきたら、楽しいって思い始めましたね。会ってきたのは、農業以外の業界の経営者の人たちや、農業者では新しいスタイルを切り拓いてきたような人や成功している県外の人。そういう人たちと話をするなかで、今までのやり方は、もしかしたら間違っているのかもしれないと思って、少しずつやり方を変えてみたり、新しいアイデアを取り入れたりしています」。

育苗ハウスで10月中旬から生産を始めるヒラタケ。11月からはナメコも育て始める。
春を迎える頃には棚は撤去して、稲の苗でいっぱいになる

農福連携で作る「カメヨコなっとう」

大豆は亀田郷の大豆生産者で作る農事組合法人「カメヨコ」として生産を行っている。大豆は直売所などで販売されているほか、新潟市北区にある社会福祉法人とよさか福祉会が運営する就労継続支援B型「クローバー 歩みの家」と組んで、「カメヨコなっとう」も商品化している。きっかけは江南区が開催した農福連携マッチング事業。納豆の製造を手掛けていた「クローバー 歩みの家」とそこで出会い、カメヨコの大豆とのコラボが実現することになったそうだ。立川さんは「僕が医療の仕事をしていたこともあったので、福祉関連には関わりたいと思っています。僕なりの色というか、そういう思いはありますね。農業研修でも、高等支援学校の実習生を受け入れています」。

  • 「カメヨコなっとう」には大粒の大豆・エンレイを使用。
    あけぼのクラブのコシヒカリとのセットも通販サイトの新潟直送計画などで販売している

行動範囲を広げ、知見を得ることで、時代に合った自分たちらしい農業の形に挑戦している立川さん。きのこ栽培を始めた背景にも思いがあった。「はじめは、稲刈りが終わってしまうと春までやることがなく、アルバイトに出かけていました。そのうち、それだと農業一本で食べていけていないのではないかと違和感を感じるようになって。そういう意味でも、冬場の仕事を作りたいと思って始めました。思いのほか忙しくなって、きのこは米づくりとはチームを別にして動くようになっています」。
今後の目標としては、一番には米づくりをやめる人の受け口になりたい、と話し、さらにこう続けた。「農業って何となく知っているけど、どんな人がどんな工程を経てこの作物を作っていて、どうやって食卓に並んでいるかわかる人は少ないのではないかと思います。誰にとっても身近な存在のはずなのに。だから、地元の学生やほかの職種の方と積極的に交流してもっと外に出ていく必要があると思います。そういった意味で僕らは積極的に地域社会とつながっていきたい。そういう農業を目指していきたいと思います」。

  • 倉庫内の冷蔵庫では夏場は米、冬場はきのこを保管

  • 事務所とハウス

お問い合わせ

農事組合法人あけぼのクラブ

〒950-0200
新潟市江南区横越字上郷2383
TEL:025-383-8651

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