親子で追う農業の未来

株式会社青木農場

新潟市西区の黒埼地区で水稲や枝豆、大豆などの栽培を手掛けている青木農場。江戸時代から続く農家で、社長の青木弘さんは18代目だ。自社加工場で餅やおこわのほか、玄米米粉を使ったグルテンフリーの焼ドーナツやバウムクーヘン「NIIGATAひかりBAUM」を製造・販売。農作物も加工品も品質にこだわったものを届けたいという同社が目指すのは、ビジネスとして成り立つ農業の形だ。

  • 写真前列中央:代表取締役 青木 弘 さん

息子と共にビジネスとして確立する農業を目指して

青木農場はコシヒカリやこがねもちなどの米、黒埼茶豆などの農産物のほか、餅やおこわ、焼きドーナツやバウムクーヘンなどの加工品も手掛けている。法人化したのは平成28年。本格的な加工場を作り、現在の体制がスタートした。「実は、その前までは家族経営の農家で終わってもいいかなと思っていたんです」と代表取締役の青木弘さんは話す。先代の父が冬の仕事として餅製造を始めたのが昭和43年。スーパーや生協に飛び込み営業をするなど、バイタリティのある人だったそう。ただ、親の働く姿を見て、報われない職業だなとも思っていた。「長男でしたが、このまま継ぐのは嫌だなと思って、カリフォルニアに1年間、米の研修に行ったんです。聞こえはいいですけど、逃げたんですよ(笑)」。
ところが、研修先でひとつの志が生まれる。「2000ヘクタールで米を作っていて、ビジネスとして成功しているのを目の当たりにしました。行く前は農業にネガティブなイメージがありましたが、日本でも頑張れば稼げる農業ができるんじゃないか、と思って帰ってきたんです」。しかし、現実は厳しく「ひとりでは変えられないし、このまま自分の代で終わっていくのかなと思っていました」。
そして10年前、他業種に就職していた長男が農業をやりたいと申し出てきた。「うれしい反面、利益構造をどう構築しようかと。やるならカリフォルニアで感じた思いに再チャレンジしよう、農業が確立する仕組みを作ろうと覚悟を決めて、会社を設立しました」。
農作物も加工品も、重視しているのは「良いものを届ける」ということ。そのためにクオリティを高める努力を惜しまない。「枝豆は嗜好品、贅沢品だと思うんですが、夏に食べるのを楽しみに待っているお客様にはしっかりしたものを届けたいと、長男を含めて、ベテランの皆さんが厳しい目で選別してやってくれている。土も毎年土壌検査をして肥料を調整しています」。

  • 夏の主力商品の枝豆。栽培を始めたのは研修に来た新潟大学の学生が作りたいと言った一言がきっかけだったそうだ

収穫した枝豆は洗浄後、水分を取ってすぐに冷蔵庫で温度を下げる。夕方、出荷し、翌日には東京の店頭に並ぶ。
枝豆の選別はAIカメラも導入しているが、最後は目視でチェック

大豆も手で刈り取り、ハウスのなかで2週間ほどかけてじっくり天日干しする。「豆餅やきなこにしますが、やっぱり味が違いますね」。

クオリティの高い商品づくりで価値を提供

餅用のこがねもちの乾燥も、一般的とされるよりも低めの温度で、50時間かけてゆっくりと乾燥させる。「やはり餅にしたときの品質が違って、滑らかで甘みがあります。ソバじゃないですけど、ひと口目は何もつけないで味わってみてほしいです」。搗く際には手で返しを行っている。「高温の年は水分が同じでも、米が硬いんです。低温の年は軟らかい。搗き上がりを同じものにするために、浸水時間や、搗く回数を調整します。うちは水をつけながら搗くタイプで、その水の量は手の感触。それは私から長男へ伝えました」。

  • おこわは木枠の蒸し器にこだわる

  • 餅つき機は30年選手。
    しっかり搗くタイプのこの機械でないと、いい味が出ないという。「こがねもち」は10月から販売開始。冷凍おこわは通年販売している

焼きドーナツやバウムクーヘンは玄米を米粉にしたいと製粉してくれる会社を探し、京都の製粉所に依頼している。玄米は農薬や化学肥料を減らした自家栽培の新潟県特別栽培米だ。「最近はグルテンフリーのスイーツを探していらっしゃる方に認識されてきている感じはあります。当社の商品はオーバークオリティの部分はあるかと思いますが、生き残り戦略として希少価値を出していくことを重視していて、いい加減には作りたくない。大げさですけど、みんなで命をかけて作っている自負はあります」。

  • 「しょうゆおこわ」と「玄米粉焼ドーナツ」

  • パティシエを中心にスイーツ開発に取り組んでいる。NIIGATAひかりBAUMは、ソフト、ハード、枝豆の3種

令和2年には社員の事故防止や農薬管理、課題解決の仕組みを確立したいとJ‒GAPを取得。その仕組みを現在は独自で運用している。「私の理念についてきてくれる社員のために、労働環境と利益構造を整えることが一番の宿題ですね」。
そして、この先の夢も生まれている。描いているのは農業をやってみたいという層を地域に迎え入れること。「この集落ではもう30軒くらいが空き家になっているんです。半農でもいいし、枝豆収穫が忙しい時に数週間滞在するだけでもいいし、定年後に農業しながら過ごす人がいてもいい。需要はあると思いますし、外部からいろいろな経験をした方が入ってくることでアイデアが生まれて、農業で地域が活性化していったら面白いなと思っています」。

  • 枝豆の選別機。作業場は、エアコンで枝豆にも人にも優しい室温に保たれている

  • 事務所では商品の直接購入も可能(月~金 10:00~16:00)

お問い合わせ

株式会社 青木農場

〒950-1122
新潟市西区木場2355
TEL:025-377-2855
FAX:025-377-1752

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