山と川と海に守られて

株式会社清耕園ファーム

日本海から2700メートル級の高山までを含む独特な地形を持つ糸魚川市は、山から流れだす川が七つの谷を作り出し、谷ごとに風土が育まれてきた。二級河川の早川の恵みを受けてきた早川地区にある清耕園ファームは、火打山・新潟焼山と日本海の水平線を同時に眺める場所にある。山、川、海によって守られてきた農地は、代々豊かな恵みを与え、そのおいしさは今、多くの人に楽しみを届けている。

  • 写真中央:代表取締役 横井 清一郎 さん

農産物をお客様の元へ届けるやりがいを社内で共有

糸魚川市早川地区の傾斜地に農舎やハウスを構える清耕園ファームは、32ヘクタールの水田で米を生産。その他にシャインマスカットなどの果樹や、枝豆、トウモロコシ、さつまいもなども栽培していて、それらすべてを消費者や飲食店に直接販売している。「おいしい農産物を鮮度の良い状態でお届けできるのが私たちの強み。お客さまからメールやはがきでいただく声はスタッフと共有するようにしているのですが、それを知ることはそれぞれが働くときの励みになると思うんですよね」と代表の横井清一郎さんは話す。
横井さんは平成4年、27歳でJA職員を退職して就農。「地域を回っていて、農家の後継者がいない、専業農家は高齢者しかいないという声を聞いているうちに、自分がやったらいいんじゃないかと思うようになって。5ヘクタールの田んぼからスタートしました」。栽培知識についてはJAえちご上越の営農部や新潟県農業普及指導センターなどからのサポートを受けてきたという。

4月、ハウス内は田植えを待つ苗でいっぱいに。田植えの準備が着々と進められていた

早川地区は、農地としてとても恵まれている土地だ。「ここから活火山の新潟焼山と、日本百名山の火打山が見えるんですが、これらの山は6月末から7月くらいまで頂上に雪があるんです。それで早川はどんな猛暑の年でも水が枯れたことがない。そして、この辺りは午前10時を過ぎると海から強めの風が吹く。風がある田んぼは病気や害虫被害が出にくく、丈夫に育つんです。農薬の使用も必要最小限に減らせるので、これは地の利ですね」。
化学肥料や農薬を5割以上減らした新潟県特別栽培認定米は「ひすいの雫」ブランドで販売している。作付けしているのはコシヒカリ、新之助、こがねもちの3品種で、顧客から人気の高い銘柄に絞っている。品種が同じだと、収穫時期には刈り取り作業が集中して大変なのではと思いきや、ここでも地の利を発揮。田んぼがある場所は、低いところは海抜10メートル、高いところは海抜200メートルにもなり、その高低差によって自然と育つスピードがずれていくのだそうだ。

  • 海も山も近く、豊富な水に恵まれた圃場は、標高差が200m近くにもなる

  • プライベートブランド米「ひすいの雫」。パッケージや発送用の段ボール箱には「愛情かけて、手間かけて。」の文字が

米がメインディッシュ。
田んぼの中に立つ薪焼きレストラン

作った米は自分で売りたいと思っていたという横井さん。就農した翌年から実現していく。その年はいわゆる平成の大凶作で、関東方面から直接売ってほしいという要望が舞い込んだのだ。その後も、糸魚川市が東京・表参道にあった新潟館ネスパス(現在は閉館)で行う観光イベントに15年ほど続けて参加。そこで出会った顧客との付き合いも続いている。「糸魚川市には、今後も東京でイベントをするときには参加したいと伝えています。スタッフにも交代で行ってもらうんです。大消費地に足を運んで外を見てほしいのでね」。
独自ルートの販売を続けるにあたって大切にしているのが、栽培プロセスの紹介を通し、農産物に込めている作り手の思いも伝えること。SNS担当者を置いているほか、毎年の作業の様子を記録した「日だまり通信」も発信。読むほどに、ファームの皆さんが身近に感じられる内容になっている。
そして、新たな形でお客様とつながる場所となっているのが、令和5年、敷地内に誕生したレストラン「mûrir(ミュリール)」だ。渡辺光実シェフが自家栽培の米を主役にした薪焼き料理を提供し、「新潟ガストロノミーアワード2026 DIAMOND」を受賞するなど、高い評価を受けている。有名グルメガイド本への掲載なども手伝って、東京からの来店客も増加。窓から山や稲がそよぐ田んぼの風景を眺めながらの食事のひとときは、唯一無二、ここでしか味わえない体験だ。

田園風景のなかに佇むレストラン「mûrir(ミュリール)」。大きな窓からは畑と海を望む。シェフの渡辺光実さんによる、自家栽培の野菜や米を主役にした料理が提供される

農産物を通して糸魚川の魅力を広く伝えながら、大切な文化である農業を継承していくことを目指す清耕園ファーム。横井さんは2年後、65歳で事業承継しようと、JAえちご上越が手掛ける担い手コンサルティングのサポートも受けながら準備を進めている。「設備投資の課題などもありますが、従業員にも恵まれているので大丈夫だと思います」と横井さん。この美しい田園で、これからも多くの実りが育まれていくはずだ。

  • 精米室

  • ファーム外観

お問い合わせ

株式会社清耕園ファーム

〒9941-0021
糸魚川市東海107-1
TEL:025-555-7001
FAX:025-555-2211

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