亀田生まれの自慢の梅

『藤五郎梅』

その実も花も愛されて

旧亀田町の特産品である「藤五郎梅」。大粒で肉厚、果汁が豊富で、他の梅よりも酸味が強いのが特徴で、とてもおいしい梅干しになると昔から愛されてきた梅だ。その発祥地は旧亀田町荻曽根(現・新潟市江南区)。青果問屋を営んでいた宇野藤五郎が庭に植えていた梅の実が評判になったのが始まりと言われ、明治期に藤五郎の子孫が品種改良を手掛けたものが「藤五郎梅」として広まった。いまでは早春の花の時期に梅林を巡るイベントが行われるなど、目でも楽しませてくれる藤五郎梅。この梅を大切にしてきた多くの人の思いを乗せて、今年もたわわな青い実が爽やかさを届けてくれる。

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  • 梅の木は植えて3年後くらいから収穫でき、樹齢100年を超える木も現役で実を付ける。
    「藤五郎梅」は県内の3市場に出荷されており、県内産の梅を求める消費者からの人気が高い

枝の剪定技術が農家の腕の見せ所

藤五郎梅は新潟市江南区(旧亀田町)の特産品として知られ、その歴史は江戸時代後期にまでさかのぼる。生産農家のひとり、村山久さんは約100本の藤五郎梅を育てており、なかには樹齢100年以上の木もある。「梅は果樹のなかでは寿命の長い植物です。100年以上経っているその木も、いまもしっかりと実を付けてくれています」。

  • 「藤五郎梅」は、標準的な梅よりも粒が大きいのも特徴

大粒で果汁が多く、酸味が強い藤五郎梅。おいしい梅干しや梅酒ができると古くから重宝されてきた。皮がとても薄く、黄色に熟してから収穫すると皮が破れやすいため、青梅の状態で収穫・出荷されるのも特徴だ。

  • 村山さんは農家の8代目。「父親からは、剪定する枝の指示はあっても理由や考え方までは教えてもらえなかった。
    自分で考えながらノートを付けたりして、今ではどの枝を切ればいいか瞬時に分かるようになりましたよ」

栽培のなかでも、特に重要な仕事が剪定。村山さんは秋、葉が全て落ちたところで、その作業を始める。「梅は枝を切った後に出てくる新しい枝に実が付きます。“桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿”ということわざがあるでしょう。梅は切らないとだめなんです」。どの枝を切り、どれを残すかによって収穫量が変わってくるため、剪定はまさに農家の腕の見せどころなのだそうだ。

  • 地面には稲わらが敷きつめられ、根の保温や雑草の抑制など、さまざまな役割を果たしている

梅畑に伺うと、地面一面に稲わらが敷き詰められている。これも古くから受け継がれている知恵だ。梅の生産者は稲作をメインにしている人がほとんど。稲作と作業の期間が被らないため、副収入に良い品目として梅が選ばれてきた背景がある。「米を収穫すると大量の稲わらが出るので、それを短く裁断して、畑に持ってきます。わらを敷くことで、根を保温できますし、雑草を防ぐ効果もあります。置いておけば自然の肥料になるので、それもいい。また、収穫の時期は雨が降るので、土だと足元がぐちゃぐちゃになる。わらを敷いてあれば、作業もしやすいんです」。
その収穫は短期決戦。例年6月10日ごろから7月初旬までの3週間に作業が行われるが、木からもぐのも、選別作業もほとんどが手作業のため、村山さんも収穫を終えると、毎年体重が落ちてしまうという。

  • 集荷場には1日約1.5トンの梅が集まる

そうした大変さもあって、高齢化してきた生産者は年々減少。ピーク時には約70名が亀田梅実組合に所属していたが、現在は42名となっている。亀田は立地もいいので、宅地化される畑も多く、栽培面積も減っているのが現状だ。一方で、消費者からの人気は年々上昇。県内消費がほとんどだが、出荷先の市場からの評価も高い。

  • 梅の集出荷を行うJA新潟みらい 西部連絡所

逆境から生まれた「かめだ梅まつり」

JA新潟みらいの田中貴章さんは「区役所も藤五郎梅を区のキャラクターのひとつに採用してブランド強化に協力いただいています。我々としても栽培指導や講習会、販売を通して、生産者さんをサポートしていきたいと考えています」と話す。
そんな藤五郎梅には以前、大ピンチとなる出来事があった。約20年前、中国から梅の塩漬けが大量輸入され、国内の梅農家が大打撃を受けたのだ。「加工業者さんから藤五郎梅はLとLLサイズしかいらないと言われ、仕方なく梅を捨てました。その年は、とても良い梅が採れていたので、なおさら悔しかったですね」と村山さんは振り返る。

集荷場の選別機でSから3Lまでの規格に分けられる

しかし、その出来事をひとつのきっかけに始まったのが「かめだ梅まつり」だ。その年、このままではいけない、亀田の梅をもっと知ってもらって、人を呼び込もうと、組合で梅まつりを各方面に提案。生産者の労力を軽減するため、梅を袋詰めする機械を導入する資金を集めたいという目的もあった。「ここには桜より早く花が咲く〝梅〟という素材がある。それを巡ったら楽しんでいただけるのではと思いました」。

  • 2001年から開催されている「かめだ梅まつり」。花が咲く3月下旬に散策コースの案内看板やのぼりが設置される

全て手作りで開催にこぎつけた初回には2,700人が参加し大成功。江戸時代から愛されてきた藤五郎梅は、再びその存在と魅力を多くの人に知ってもらえることとなった。
もうひとつ、藤五郎梅を伝える活動として村山さんが続けているのが、地元の小学生への梅授業だ。「梅はどこから伝わったのか、なぜ梅雨には梅の文字が入っているのか、どのようにして梅干しを作るのかなど、いろいろな知識と合わせて梅の話をすることで、子どもたちも興味を持ってくれる。日本の古き良き文化を受け継ぎ、守っていってほしいと思います」。

  • 梅は加工しなければ食べられない果実。村山さんは、梅干しや梅ジャムなどの加工・販売も手掛けている

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亀田梅実組合

村山(むらやま) (ひさし)さん

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JA新潟みらい営農経済部

田中(たなか) 貴章(たかあき)さん

直売所で購入できます

ファーマーズ・マーケット
いっぺこ~と

営業時間:9:30~18:00

休日:水曜、12/31~1/4

住所:新潟市西区亀貝3066

気楽市直売所

営業時間:12:00~18:00
※11月~4月は12:00~17:00

休日:無休

住所:新潟市江南区旭3-1-58
(ジャスポートG/S内)

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JA新潟みらい 園芸畜産販売課

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