佐渡で輝く黒いダイヤ

『おぎビオレー』

蜜のように甘い幻の果実

おぎビオレーは、佐渡市小木地区で作られているブランドイチジクだ。品種はフランス原産のビオレ・ソリエスという黒イチジクの一種。実は小ぶりだが、その味は初めて食べた人が皆驚くというほど濃厚で、まるで蜜のような甘みが特徴だ。栽培が難しく、希少価値が高いことから幻のイチジク、黒いダイヤとも呼ばれ、おぎビオレーも多くが東京などの有名レストランやスイーツ店などに納められている。最近は各地で少しずつ生産されるようになってきているが、小木が国内生産地の先駆けであり、日本有数の産地でもある。約20年前、農家仲間のふとした会話をきっかけに小木に届いた苗木から、その物語は始まった。

栽培開始から数年は、収穫ゼロというピンチ

佐渡島の南端に位置する小木地区。ここで「日本一おいしいイチジクを作ろう」をスローガンに、12軒の生産者が黒イチジクのビオレ・ソリエスの栽培を手掛けている。ビオレ・ソリエスは完熟すると糖度が20度にもなる濃厚なおいしさが魅力。その一方で育成が難しく、収穫量も多くないため、「黒いダイヤ」と呼ばれるほど市場価値が高い。小木はそのイチジクの国内有数の生産地であり、「おぎビオレー」は首都圏を中心に引く手あまたの人気を誇っている。
小木でビオレ・ソリエスの栽培を始めるきっかけは、平成11年のこと。「減反の転作作物の視察に私と金子さんと、もう1人で回っていました。当時は葉たばこが主だったのですが、その需要も減ってきて、他にいい作物はないかなという話をしていたんです。そのとき金子さんが果樹をやりたいと言い出して、そういえば国仲地区でもイチジクを作っているし、考えてみようかという話になったんです」と、初代組合長の菊地行男さんは振り返る。日本のイチジク生産は桝井ドーフィンという品種が主流。しかし、菊地さんたちは「作るなら他には無いおいしいものを作ろう」と意気込んだ。八方探した末に広島の桝井農場に「何か良い品種はないか」と問い合わせたところ、送られてきたのがビオレ・ソリエスの苗木だった。

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  • ビオレ・ソリエスを導入した当初から生産している金子さんの圃場では、7棟のハウスで80本ほどを育てている。
    早朝から収穫し、午前中のうちに出荷する

しかし、そこからが苦難の連続。植えた苗木はぐんぐん育つが、全く実がならない。それが何年も続いたのだ。当時、国内でビオレ・ソリエスを栽培しているところが無く、各所に相談してみても原因が分からない。そんななかでも、わずかに実ったビオレ・ソリエスを食べたときは、そのおいしさに本当に驚いたという。そして工夫を重ねた結果、樹勢を抑えることで着果が良くなるという答えにたどり着いた。

  • 栽培で大事なのは園地の除草。
    草が伸びると、それを伝って小さな虫が実に入り、中が黄色く変色してしまうそうだ

  • 皮が薄くて柔らかく、皮ごと食べられる。
    収穫は8月下旬から10月中旬まで

しかし、次は「売れない」という壁にぶつかる。知名度がないために、店においても全く手に取ってもらえなかったのだ。そこに救世主が現れた。「フランスの食材を輸入販売している会社が、たまたまホテルイタリア軒でおぎビオレーを見て、どこで作っているのかと尋ね、小木まで来てくれたんです。その会社を通して、東京の有名ホテルやレストランに卸されるようになり、知名度も上がっていきました。この出会いが、おぎビオレーにとって大きな転換期となりました」。

ハウスでモーツァルトを聴きながら

おぎビオレーの品質を守るため、生産には条件がある。まず果実が雨に弱いので、雨除けハウスを必ず設けること。出荷するものは糖度18度以上であること。さらに、ギフト用ブランド「金のクローバー」の戦略として、収穫時にモーツァルトを聴かせる、というものだ。「収穫は早朝3~4時から行うのですが、作業をしていると、あちこちからモーツァルトが聴こえてくるんですよ。なんとも優雅でしょう」と菊地さんは笑う。

  • ハイクラスブランドの「金のクローバー」は、木の枝を4本伸ばして仕立てた様子が、
    上から見ると四つ葉の形に見えることから命名

  • 皮に傷が付かないよう、パック詰めにも気を遣う

さらに、品質を守るために大切にしているのが、組合員全員の気持ちをひとつにすること。そしてJA佐渡も産地づくりをサポートしてきた。モーツァルトを聴かせることが決まり、組合員分のCDを用意したのが、小木営農農機課の齋藤麻衣子さんだ。齋藤さんは「組合員の皆さんが高い意識を持って、おぎビオレーの栽培に取り組んでいて、販売先との交渉にも積極的で、いつもすごいなと思っています。JAとしては新規の生産者を増やし、生産量を増やしていけるよう、引き続きサポートしていきたいと思っています」と話す。現在組合長を務める石塚雅実さんも「おぎビオレーは収入が得られる作物。若い担い手がこれから増えてくれたらありがたい」と、今後の発展に期待を寄せる。

集荷場では、JA職員が品質と数量などをチェックし、生産者みんなで出荷準備。
実の軟らかさや、一番おいしい完熟を食べてほしい想いから輸送時の課題にも直面したが、
試行錯誤し、ひとつひとつクリアしてきた

おぎビオレーをきっかけに、東京の一流レストランやホテルを訪れたり、パーティに招かれるなど「普通の農家では経験できないようなことを、経験させてもらった」と話す皆さん。そして最後に、一番感謝したいのは、自分たちの奥さんだと話してくれた。「全く実がならない間も、何も言わないで見守ってくれて。あの時諦めていたら今はなかった。だから奥さんたちには本当に感謝しています」。

  • JA佐渡 小木青果物集出荷施設

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JA佐渡
小木営農農機課 主任

齋藤(さいとう) 麻衣子(まいこ)さん

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写真左から

小木イチジク生産組合

金子(かねこ) 一輝(かずてる)さん

小木イチジク生産組合
組合長

石塚(いしづか) 雅実(まさみ)さん

小木イチジク生産組合

菊地(きくち) 行男(ゆくお)さん

お問い合わせ

JA佐渡 小木営農農機課

〒952-0604
佐渡市小木町1289-1
TEL:0259-86-3711 
FAX:0259-86-3760

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