甘くて爽やか、春の味

『春キャベツ』

JAえちご中越三条園芸振興協議会の栽培面積は7.7ヘクタール。春キャベツは県内一の出荷量を誇る

ベテラン揃いが育む品質

季節がめぐり、春本番を迎えるころ。野菜売り場にはふんわり丸い姿をした「春キャベツ」が並び始める。一般的なキャベツと比べると葉が柔らかく、甘みも強い「春キャベツ」は、新潟県内では中越エリアが一番の産地。信濃川河川敷の肥沃な土壌を活かして栽培されている。生産者はキャベツを作って30年、40年というベテラン揃いで、生産量だけでなく品質も県内最高峰だ。出荷は5月下旬から約1カ月間の期間限定。春キャベツならではの甘みや歯切れの良さを、いろいろなメニューで味わってみよう。

  • 春キャベツは葉が柔らかく、サラダや浅漬けなどの生食に向いている。
    炒めたり煮たりするときはサッと火を通す程度がおいしい

三条園協の春キャベツは県内一の出荷量

令和5年の6月初旬、三条市の信濃川河川敷にある内山公一さんの畑では、春キャベツの収穫が行われていた。JAえちご中越管内の「三条園協(三条園芸振興協議会)の春キャベツはおいしい、と言われるのがうれしい。本当においしいですから、たくさん食べてほしいですね」。83歳だという内山さんは、いつからキャベツを作り始めたかは覚えていないな、とほほ笑みながら、妻のミチ子さんと共に作業に精を出していた。収穫は朝の4時半ころから7時までの涼しいうちに行われる。1個ずつ大きさを確かめて、包丁で芯の部分を切り、内山さん手作りの台車に載せていく。そのまま畑で段ボールに詰める作業も行い、荷台いっぱいに箱を積み上げた軽トラックは、昼過ぎに集荷場へ向かう。

包丁で芯を切り離し、1個ずつご主人手作りの移動式の台車に積んでいく。昔は籠を背負って収穫していたそうだ

箱詰めし軽トラックに積み込んで集荷場へ

県内随一の春キャベツ産地である三条市は、昭和56年から県内キャベツの有力産地になっている。特に栽培に向いているのが、信濃川沿いにある石上地区・栗林地区だ。JAえちご中越の山田喜大さんは「河川敷の土壌は砂地なのでキメが細かく、水はけが良くて、雨が降った日でも畑に入って収穫ができるほど。上流から運ばれてきた土が肥沃なので、野菜の育ちがいいんです」と話す。三条園協の会員は15名いて、多くがキャベツ栽培の経験が30年、40年というベテラン。「それもあって、県内でもレベルは最高峰だと感じます。品質が安定しているためクレームもほぼありません。いつも我々が思っている以上のクオリティのものが入荷するので、営農指導員も指導するというより、教わることばかりです」。
内山さんがキャベツを育てるにあたって大切にしているのは、やはり土づくり。枝豆の殻の上に米糠を撒いて作った堆肥と、買った堆肥を混ぜているのだという。

そして、最も気を遣うのは苗を作るまでの管理。真冬の2月15~20日に種を播き、冬とはいえ毎日水やりを欠かさない。被せたビニールのトンネルを昼間は開け、夜は閉めるという手間をかけながら、新葉が4枚になったところで畑に移植する。「青春」「青春二号」「初恋」といった品種をリレーしながら、5月下旬から6月下旬まで出荷される。

5月・6月は休み返上で連日市場に送り出す

出荷のピークは6月上旬で、多い日は1日に2万個、ケースにして約3500箱が集荷場に運び込まれる。JAでは市況を見ながら、出荷先を割り振っていくのだが、その出荷調整が大変な作業だ。JAえちご中越の川上綾斗さんは「Lサイズが欲しいところ、2Lサイズを希望するところなど、それぞれのニーズを見極めながらトラックに積み込んで、すぐ市場に向かってもらいます」と話す。この日、石上倉庫には2時すぎから続々とトラックが到着。一部はフォークリフトを使いながら、多くは人力で、10キロある箱が次々と積み込まれていった。

  • 1箱は約10㎏にもなる

市場へ向かうトラックが到着し、次々に積み込まれていく。
収穫期の5~6月の出荷作業は、担当者も休みなしだ

山田さんは、肥料や資材の価格が高騰しているいま、JAとしては出来るだけそれらを安く提供して、農家さんの稼ぎを確保することを大切にしたいと話す。また、ベテランが多いということは、一方で後継者不足であることも示す。「実は昭和の後半から生産者の顔ぶれは変わっていません。法人でも個人でも、三条のキャベツ栽培を担ってくれる人を求めています」。
今回、畑にお邪魔した内山夫妻も高齢で、収穫のときには会社勤めをしている息子さんに手伝ってもらっていると話す。「軽トラックに積み上げるのが大変だけど、収穫できるとなったときが、やっぱりうれしいね」と笑顔の内山さん。ミチ子さんが作るキャベツの胡麻和えや、千切りキャベツにチーズをのせてレンジにかけた一品をおつまみに、晩酌を楽しむのだという。ベーコンと一緒に煮たスープには卵を落とすのが内山家流だ。春キャベツは冬を越えておいしさが凝縮された春の味。素材を活かした料理でたくさん楽しんでほしい。

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写真左から

JAえちご中越
なんかん北営農センター
園芸特産課

川上(かわかみ) 綾斗(あやと)さん

JAえちご中越
なんかん北営農センター
園芸特産課

山田(やまだ) 喜大(よしひろ)さん

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JAえちご中越
三条園芸振興協議会 春キャベツ部長

内山(うちやま) 公一(こういち)さん

お問い合わせ

JAえちご中越 なんかん北営農センター

〒959‐1387
加茂市高須町2-7-3
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