『アスパラガス』

生命力をいただく野菜
季節が春から初夏へと移る頃、みずみずしい緑色を湛えたグリーンアスパラガスが店頭に並び始める。新潟県内では新発田市、十日町市、そして津南町が主要産地だ。5月から出荷が始まる津南町のアスパラガスは、甘くて柔らかく、ジューシーなおいしさで評価が高い。当地で栽培が始まったのは、50年以上前から。JAに残る一番古いデータでは、昭和49年時点で14件の農家が手掛けている。苗を植えてから収穫を始めるまで3年かかり、生産者はそこから10年、長い人は20年もの間、その株と付き合っていく。おいしい津南のアスパラガスは、高原の豊かな自然と生産者の愛情に育まれて、私たちのもとに届けられている。
アスパラガスの生育に向いている津南高原の風土
なだらかな河岸段丘の土地のあちこちに、畑が広がる津南高原。雪が消えると間もなく、アスパラガスの畑では土の中から次々と緑の芽が飛び出してくる。「成長が早いので、1日に2回収穫をして、翌朝に出荷します。5月のゴールデンウィーク明けから始まり、7月10日までの収穫シーズンは、毎日畑に行って、毎日収穫です」。そう教えてくれたのは、津南町アスパラガス部会の部会長を務める鈴木祐介さんだ。
津南町でアスパラガス栽培が始まったのは50年以上前。昭和の終わりから平成初期にかけて面積が拡大し、県内を代表する産地になった。アスパラガスは冷涼な気候を好む作物だ。北海道や長野で作られるようになったのを受け、津南高原にも導入されたのではないか、と鈴木さん。「津南は雪下にんじんやユリのカサブランカなど、球根や根菜の特産品が多い。アスパラも地下茎の野菜です。根っこのものが得意な土地だと思いますね」。豊富な雪解け水と肥沃な土壌、寒暖差がある高原ならではの気候が、その理由なのだろう。
鈴木さんは50アール弱の畑でアスパラガスを生産。半分が新しい株、半分が古い株だ。この畑は奥行100メートルあり、1回の収穫で2キロは歩くそうだ。アスパラガスは年数を重ねた株の方が太いものが採れる。若い株は細いものが数多く出るが、採り過ぎると株が弱るので、加減が必要だ
アスパラガスは地下茎から伸びてくる茎を食べる野菜。それゆえ、株をいかに育てるかが品質に関わってくる。苗を植えたら3年は養成をし、4年目から収穫を始める。10年ほどで株の入れ替えをするが、なかには20年以上の株を育てている農家も。「年数が経つほど、生産者さんの腕が現れますね」と話すのはJA魚沼・津南基幹営農センターの小林慎吾さんだ。
株は収穫が終わってからの管理が重要で、収穫を7月10日までと決めているのも、株を弱らせないためだ。「枝になりたくて伸びてくるものを切っているんだから、株も疲れてきますよね。ちょっと申し訳ないなと思ったりもしますよ」と鈴木さん。
収穫を止めると、芽はぐんぐん伸びて1.5メートルほどの背丈になる。知らない人が見たら、もくもくと茂る葉が、あのアスパラガスが成長した姿とは想像がつかないだろう。伸びた枝は11月の後半、できれば雪が降る直前に刈り取るが、それまで枯らすことなく、しっかり光合成をさせて根に栄養を届けることが重要とのこと。「そうやってため込んだ栄養を使って、春に土から伸びてくる。生命力をいただいているという感じがします」。
収穫後も購入後も「起きないように」保管
収穫した際、注意しなければいけないのがアスパラガスを立てておくこと。「寝かせておくと、上に向かって伸びて曲がってしまうんです。我々はそれを“アスパラが起きる”といいます。みなさんも買ってきたら新聞などにくるんで、牛乳パックなどに立てて、冷蔵庫で保存を。横にすると起きてしまいます」。
集荷場に集まったアスパラガスを画像判定でサイズ分けしていく選果作業。
特に太いものは手作業で計測、結束していく
翌日8時半までに共同選果場に集められたアスパラガスは、画像判定でサイズ分けし、結束して箱詰めされる。平成25年にこうした機械が入り、生産者の負担がかなり減ったという。「個人で箱詰めまでやっていたときは、収穫よりも帰ってきてからの作業の方が大変で、栽培面積を広げたくてもできなかったんですね。ずいぶん楽になりました」。
箱詰めされたものは真空冷却で予冷した後、雪室で保存し、翌日関東や新潟の市場へ出荷される。JA魚沼としてもアスパラガスは重点品目のひとつ、と小林さん。「生産者にとっても収益がとれる野菜といえます。高齢化で生産者が減っているのですが、新規就農の人に圃場を引き継いで管理してもらえたらいいなと考えているところです」。鈴木さん自身も東京出身で、津南に移住して新規就農したひとり。「農業は成果が毎年違いますが、良かったときは単純にうれしい。面白さはそういうところにありますね」。
結束して箱詰め
真空冷却槽で予冷
平成22年に出来た雪室。1年経っても雪が消えることはない。
これにより、保冷費用が100万円以上削減したそうだ
アスパラガスは油と相性がいいので、定番のベーコン巻きや天ぷらがおすすめ、とおふたり。「太いものはジューシーでもちろんおいしいですが、細いのもいい。細いのを集めてかき揚げにするのもおすすめですよ」とのこと。春の訪れとともに届くおいしさを、津南の自然、生産者の皆さん、そしてアスパラガスの株に感謝しつつ、大切に味わいたい。
JA魚沼 予冷庫

JA魚沼
津南基幹営農センター
小林 慎吾さん

津南町アスパラガス部会
部会長
鈴木 祐介さん
お問い合わせ
JA魚沼 津南基幹営農センター
〒949-8201
津南町大字下船渡戊130-1
TEL:025-765-3123
FAX:025-765-3483
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