『かぐらなんばん』
歴史ある固有種を繋ぐ
ゴツゴツとした表面の姿が、神楽で演者が着用する仮面の神楽面(かぐらおもて)を思わせることが、その名の由来となっている「かぐらなんばん」。長岡市山古志(旧山古志村)、そして魚沼地域で古くから栽培されてきた新潟の伝統野菜だ。唐辛子の一種ではあるものの、辛いだけではない奥深い味わいを、かぐらなんばんは持っている。なんばん味噌でいただくことが多いが、フレッシュな青なんばんのおいしさも知ってほしいと奮闘する生産者の元を訪ねた。
辛口なのに、その素顔はとても繊細
かぐらなんばんは江戸時代から長岡市山古志(旧山古志村)で栽培されてきた伝統野菜として知られ、いまでは南魚沼も産地だ。なかでも塩沢地区で作られているかぐらなんばんは「塩沢系統」と呼ばれ、水分が多くて肉厚なものが採れるのだという。
JAみなみ魚沼の関隼人さんは「かぐらなんばんが南魚沼に伝わった背景として、戦時中に長岡空襲から逃れて疎開してきた人が種を持ってきて栽培したのが始まりと聞いています。そこからずっと種を採り継いで今に至っています。南魚沼の他の地域で作られるものも肉厚なのですが、塩沢のものはなぜかより厚みが違う。土地の特徴なのかなとも思います」と話す。
青なんばんは花が咲いてから1カ月ほどで収穫。
さらに1カ月ほど置いて完熟させた赤い実は加工用。市場にはほとんど出回らない
現在、塩沢地区でかぐらなんばんを育てているのは8名。そのひとり、石坂敦子さんはかぐらなんばんのために14年前に就農した生産者だ。巻機(まきはた)なんばん味噌を作っていた女性グループからその製造法を受け継ぎ、同時に栽培も手掛けることになったのだ。「実家が農業をしていて手伝いもしていたので、できるんじゃないかと思っていたんですけど、やっぱり最初は苦労しました」。

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植え付けは5月中旬から6月上旬。8、9月が出荷の最盛期だ。
風通しを良くするために、葉を取って調整するのが毎日の仕事だ
夏野菜ではあるものの、日に当たると白く日焼けしやすく、病気にも弱いし虫も付きやすい。水にも弱く、豪雨で水に浸かれば、すぐにダメになる。実は水分が多くて重いため、枝が折れないように支えが必要など、とても手がかかるのだ。石坂さんの場合は、なんばん味噌を作るために赤く熟したものを多く収穫したいが、腐りが出やすいのでどの実を残すかなどの加減も難しいという。世にある多くの作物は病気に強く、育てやすくなるように品種改良されているが、かぐらなんばんはそれがない。固定種ゆえの繊細さであり、流通量が少ない理由もそこにある。
高さ1.5メートルほどにも成長。ずっしりと重い実がたくさんなるため、枝吊りをして枝が折れてしまうのを防ぐ
生育環境を良くするため、石坂さんはハウスで栽培。苦労はあるけれど、その分、実った姿は愛おしく、さらに食材としての魅力にもハマったと話す。「最初はなんばん味噌を作るために育てていましたが、そのうちかぐらなんばんそのもののおいしさに魅了されてしまいました。旨みのある辛さも、香りも、フルーティさも、かぐらなんばんにしかない味わいです。生のものを調理して食べる機会が産地外の人は多くないと思うのですが、もっとたくさんの人に知ってもらいたいなと思っています」。

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石坂さんはJAの育苗ハウスを借りて栽培。
ちょうど稲の苗と栽培期間が被らないため、ハウスの有効活用につながっている
綿の中にある黄色い筋がとにかく辛い!
かぐらなんばんの一番の特徴といえば辛さだが、その強さは年によって違うのだという。「傾向として猛暑の年は辛さも強いと感じます。食べてみないと分からないのですが、それも面白いですね」と石坂さん。また、一番辛いのは、白い綿の中にある黄色い筋の部分。これを除けば辛みを抑えられ、激辛好きは多めに入れるなどして調整できるそうで、覚えておきたい豆知識だ。

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黄色い筋がとても辛い。この部分だけを集めてラー油を作る人もいるのだそう
石坂さんはかぐらなんばんの通信販売も行っているが、県外客のなかには、新潟で食べた味が忘れられず、探してやっと販売サイトにたどりついたという人も。「火を通すと水分が抜けて、旨みがアップすると感じます。よくおすすめするのはガパオライス。ピーマンの代わりに肉詰めに使ってもおいしいです。巻機工房のサイトに料理レシピを載せているので、ぜひいろいろな料理で召し上がっていただきたいです」。関さんのおすすめはBBQ。「網にのせて焼いてガブッといきます。ものすごく辛いものもあるのでチャレンジなのですが、辛さのあとに爽快感があるんですよね」。
出荷はほとんどが県内向けで、スーパーや直売所で手に入れることができる。果肉にハリがあってつややかで、ヘタの部分がみずみずしいものが鮮度の良い状態。昨年は猛暑の影響もあって、生産量が少なかったが、今年は4トンを目標にしている。「歴史がある野菜だけに、JAとしても守っていきたいと思いますし、米の生産者に種を配るなどして、栽培が広がる働きかけをしています」と関さん。一度食べると虜になる人が多いその味に、この夏はぜひチャレンジしてみたい。
1袋に4個入ったMサイズが主流。スーパーや直売所で購入できる

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しおざわ農産物集荷所

巻機工房
石坂 敦子さん

JAみなみ魚沼
営農部
関 隼人さん
お問い合わせ
JAみなみ魚沼
〒949-6416
南魚沼市大木六596-9
TEL:025-782-2246
FAX:025-782-4846
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