守り継がれる新発田のブランド豚肉

『北越後パイオニアポーク』

旨さで評判のご当地銘柄

豚肉の消費量が全国トップクラスという新潟県。それもあって、県内には数多くのブランド豚肉が存在する。新発田市で生産されている「北越後パイオニアポーク」もそのひとつだ。発祥は紫雲寺町(当時)で、平成6年に「しうんじパイオニアポーク」と名付けられた。その後、平成17年の市町村合併などを受けて「北越後パイオニアポーク」となり、現在に至っている。上質な肉質、甘みのある脂身で、その味は広く好評を得ているが、生産現場では十数戸あった生産者が、この数年で急激に減少。現在は2生産者がその品質を守っている。地域で育まれてきたおいしさを繋ぐため、奮闘する若手生産者のもとを訪ねた。

  • 出産は不安要素が無い限り、母豚におまかせ。朝、豚舎に来ると生まれているということもしょっちゅうあるそうだ。
    生まれてしばらくは親豚と一緒に過ごし、子豚だけの部屋へ。その後、成長に合わせてブロックを移動させていく

ストレスを与えない配慮ですくすく成長

JA北越後エリアで生産されているブランド豚肉の「北越後パイオニアポーク」。きめが細かく、ほどよい歯ごたえのある肉質で、臭みはなく、脂身に甘みがあっておいしいと評判の豚肉だ。新発田市のふるさと納税の返礼品としても、しゃぶしゃぶセットが採用されていて、リピーターもいる人気ぶりだ。北越後パイオニアポークとなる指標は、北越後管内の農場で、指定の配合飼料で育てていること。1994年に銘柄化されてから30年、銘柄豚としての名前と美味しさは広く浸透してきている。
しかし、10数軒あった養豚農家は減少が続いてきた。発祥地の紫雲寺地区は後継者がおらず、全戸が廃業。現在は新発田市内の2戸が手掛けている。そのうち、父の仕事を継いで頑張っている若手農家が相馬農場の相馬成実さんだ。
養豚業にとって最も状況が厳しかったのが、今から12年前の平成23年頃。低豚価と餌の高騰により、どの生産者も経営が苦しかった。相馬さんの父も養豚を止めようとしていたという。「末っ子だったので、自分が家業を継ぐとは思っていませんでした。でも父の話を聞き、それなら手伝おう、やってみよう、と思ったのがきっかけです」。
相馬農場では親豚が40~50頭おり、それぞれが年間に2回ほど出産する。一度の出産で離乳までつながるのが12、3頭だそうだ。およそ6カ月で出荷となるが、相馬さんの農場では成長の早い豚は5カ月から出荷され、5カ月半までにはしっかり育つ。その理由は生育環境の良さにあるという。

温度をチェックし、暑いときには水をしっかり飲めるようにしたり、風を送ったりして夏バテを防ぐ

飼育にあたって重要なのが、豚にストレスを与えないこと。「父からも一番そのことを言われてきました。大切なのは温度管理ですね。夏は暑ければ食欲が落ちるので、夏バテをおこさないように、送風機で風を送るなどして調整します。また成長して居場所が狭くなるとストレスを感じるので、場所を移動させるなど、常に様子を観察しながら世話をしていきます」。
快適な環境であれば、餌も良く食べてくれて、成長も早い。さらに、相馬農場では指定の飼料に、食べやすく粉砕した飼料用米を加えて与えている。「飼料は粉っぽいので、そこに米が入ることで食感が加わって、食いつきがよくなります。米をやると下痢をしにくいというメリットもあるんです」。

子豚用と親豚用の飼料は粒の細かさが違う

将来必要となる体制を見据えながら

豚は生後半年で体重が100キロを超えるまでに成長。年間約1,600頭が出荷されるパイオニアポークのうち、1,100頭が相馬農場から送り出されている。
仕事の励みになるのは、やはり食べた人からの「おいしかった」という声、という相馬さん。「購入できる場所が限られているので、新発田へ買いにいきたいと聞くとうれしいですね」。
また、近くに同世代の生産者がいないため、相馬さんは村上エリアの生産者の集まりに参加させてもらっているという。「育て方が各々違うので勉強になります。同世代と話ができるのが心強いです」。
時間をかけて知名度を上げてきた銘柄だけに、JA北越後としても残していきたいと、営農販売部畜産課の中野裕係長は話す。「豚の業界は、鶏の業界と同じように企業化が進んでいて、全国的に農家養豚は先細りになっているのが現状です。我々はそこを応援しながら、パイオニアポークをこれからも多くの皆さんに食べていただきたいです」。

  • きめ細かく歯ざわりがいいと評判の「北越後パイオニアポーク」。JA北越後農産物直売所こったま~やで購入できる
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相馬さんも将来的には法人化しなければ生き残っていけないと考えていると話す。「目標は法人化ですが、いまはすべてが高騰している時期なので、タイミングを見て進めていこうと思っています。実は兄も一緒に養豚をやっていきたいと言ってくれています。この場所で大きくするには周囲の住民の皆さんのこともあるので、場所を含めて考えていこうと思っています」。
おふたりに一番好きな食べ方を伺うと、「しゃぶしゃぶ」と意見が一致。「相馬さんのお父さんからもバラのしゃぶしゃぶが一番旨いと聞きました」と中野さん。相馬さんは「あとは軽く焼いて塩コショウでシンプルに食べるのが旨いですね」とのこと。ぜひ、肉そのもののおいしさを堪能できる料理で、パイオニアポークの味を楽しんでみてほしい。

新潟県が認定するクリーンポーク農場の指定も受けている相馬農場。防疫にも気を遣う

  • JA北越後営農センター

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JA北越後
営農販売部畜産課 係長

中野(なかの) (ゆたか)さん

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相馬農場

相馬(そうま) 成実(なるみ)さん

お問い合わせ

JA北越後 営農センター

※2024年3月より「JA北新潟」に名称変更します

〒957-0011
新発田市島潟字弁天1449-1
TEL:0254-26-7000 
FAX:0254-22-2838

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