旬の到来がうれしい新潟の春の味

『春かぶ』

砂丘地に生まれた一大産地

4月初旬から出荷が始まる新潟の「春かぶ」は、冬を越えて最初に旬を迎える作物のひとつ。一番の産地は新潟市西区の赤塚地区で、なんと県内シェアは99パーセントだ。カブは秋や冬にも作られているが、春かぶはそのおいしさが段違い。真っ白できめが細かく、柔らかくてとてもジューシー。そして、驚くほど甘い。砂丘地で育つということも、そのおいしさを生み出すポイントのようだ。いまや新潟の春の代表野菜となっているが、産地としての歴史は30年余り。いま、先駆者から受け継いだ産地を守り繋ぐため、16人の生産者がよりよい春かぶづくりに毎シーズン取り組んでいる。

葉付きで出荷・販売できるのが強み

4月初旬、桜の開花状況がニュースを賑わせる頃、店頭には新潟市産の春かぶが並び始める。県内随一の産地、赤塚地区の生産農家のひとつ、山本農園の山本雄一さんは「知り合いの農家が春きゅうりを作っていて、そこが出荷を始めると春かぶのシーズンも始まります。うちもいよいよ忙しい毎日が始まるぞ、と気持ちが入りますね」と話す。
新潟の春かぶは、なんといってもみずみずしさと甘さが魅力。サラダや浅漬けにすると素材そのものの味が分かり、「かぶってこんなにおいしいんだ」と思うこともしばしば。そんなシーズンの到来を楽しみにしている人は多いはずだ。
赤塚地区では現在、16人の生産者が栽培を手掛けていて、県内シェアは99パーセントと圧倒的だ。ハウス作型と露地作型の両方が行われていて、まずハウス作型から出荷が始まり、4月下旬に露地作型へと移っていく。「この産地の特徴は、葉を付けた状態で出荷することですね。他産地では葉を落とすのが主流です。葉を付けたまま販売できるのは鮮度の証で、新潟は湿度があるので、それができるんです」とJA新潟かがやきにいがた西アグリセンターの朝妻聖さんは話す。

  • 山本さんの圃場では、早朝3時から収穫をスタート。4月の下旬に露地作型の最盛期を迎える

山本農園ではハウス20アール、露地30アールで春かぶを栽培している。山本さんの父親は、赤塚地区で春かぶを作り始めたメンバーのひとりだ。「この地域はもともとタバコ栽培が盛んで、秋にタバコを収穫してから春までの間に収入源となる作物を探していて、かぶを選んだそうです。最初は数人で始め、それを少しずつ広げていったと聞いています」。地域の人々が、30年あまりをかけ、力を合わせて作り上げたこの産地に対して、山本さんたちの世代も、受け継ぎ、守っていきたい思いがあると話す。「せっかく、こうして産地になったのだから、残していこうという気持ちはありますね。周囲のいろいろな野菜の産地を見ていると、高齢化や後継者不足によって縮小していくところもあるのが現実。一方で、新たに別の作物の産地を作ろうという動きもあるけれど、現状としてあるものをしっかり残していくことも大事なことだなと思っています」。新潟西かぶ部会では、お互いの圃場を巡回し、肥料や栽培方法の情報を共有。出荷が始まる時期に行う目合わせで共有する規格や等級の基準もシビアに設定して品質を保つ努力をしている。

4月下旬、露地作型の出荷を前に行われた目合わせの様子。A品、B品、出荷不可の基準を生産者で共有する

春ならではの天候を見定めながら

赤塚地区は砂丘地にあたり、山本農園の圃場も土壌はサラサラとした砂地だ。それによってかぶはストレスなく育ち、真っ白で、きれいな丸い形になる。畝を見ると、隙間なくぎっしりと植わっているのだが、これは実の部分に太陽光が当たって緑色になるのを防ぐため、葉に日除けの役割をしてもらっている形だ。実の半分くらいまでしか土に埋まっていないので、軽く引っぱるとすっと抜ける。しかし、ずっと腰をかがめながらの収穫は一苦労だ。

  • 葉が日除けの役割を果たしている

  • 水洗いされたかぶは真っ白で輝くようにツヤツヤ

この日は15~20束入りの箱を100ケース出荷。平均4~5個で1束なので、ざっと8,000株前後を収穫した計算になる。収穫は早朝3時からスタート。7時にはかぶを畑から作業小屋へ運び、調製作業を経て、その日の夕方5時までに集荷場へと運ぶ。
山本さんのところでは、1月下旬にハウス、2月上旬に露地に種まきをする。露地作型はビニールのトンネルをかけて保護をしながら育てていくが、難しいのはトンネルを外すタイミング。春先の新潟は、たいてい強風の日がある。そのときにトンネルを外していると、風で葉が揺れて実も傷ついてしまう。週間天気予報や気温を見ながら、外すタイミングを計っているそうだ。「育ってきたら少しずつ換気をして、徐々に外気に慣らします。急に外すとかぶもびっくりして枯れてしまうんです。葉付きで売るので、そこは注意が必要ですね」。

  • 収穫してきたかぶは、傷んでいる葉を取って整え、サイズに分けて束ねたあと、水洗いをする

そのおいしさから市場人気も高く、JAへの引き合いの声も多いと話す朝妻さん。「春に最初に旬を迎える作物で、地物野菜のスタートを切る存在。スーパーで赤塚産を見たら、ぜひそのおいしさを味わってほしいです」。春かぶは柔らかいので皮をむく必要はないと山本さんはアドバイス。「生で食べることが多いと思いますが、厚めに切って軽く焼き、オリーブオイルと塩で食べるのもおすすめですよ」。

集出荷場から主に県内の市場へ出荷される

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JA新潟かがやき
にいがた西アグリセンター

朝妻(あさつま) (さとる)さん

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山本農園
新潟西かぶ部会

山本(やまもと) 雄一(ゆういち)さん

お問い合わせ

JA新潟かがやき
にいがた西アグリセンター

〒950-2253
新潟市西区木山字砂原390
TEL:025-210-4551 
FAX:025-210-4701

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