『里うさぎ』
新ブランドに期待をかけて
「のっぺ」や「いもみそ」など、新潟の郷土料理に欠かせない素材の里芋。県内には五泉市の「帛乙女」、新潟市秋葉区の「里のいもこ」、聖籠町・新発田市の「砂里芋」などのブランドがあるが、令和4年に誕生したニューフェイスが、長岡市産里芋の「里うさぎ」だ。長岡でも長く栽培されてきた里芋を、生産者たちの声を受けてブランド化。色の白さ、ころんとした丸い形をイメージした愛らしい名前がつけられた。2年目のシーズンとなる令和6年度の生産計画は63トン。その名前とおいしさを広くアピールするべく、JAえちご中越と生産者が共に動き出している。
収穫は機械で掘り上げていくが、出荷の準備はほとんどが手作業だ
生産者の声に応える形でブランド化がスタート
令和4年に誕生した新しいブランド里芋の「里うさぎ」。長岡市産の里芋のなかで、Mから3LサイズのA品のみが、里うさぎとして出荷が許されていて、ほどよいぬめりと滑らかさ、そして皮を剥いたときの白さが自慢だ。もともと長岡市では里芋生産が盛ん。葉タバコ農家が連作対策として栽培したり、米の転作作物として選ばれたりして、次第に生産量が増えていったそうだ。
ブランド化は生産者からの要望をきっかけに、令和元年から具体的な動きがスタート。名称を生産者やJA職員から募集し、生産部会で選考された。「斬新な名前候補もありましたが、やはり万人に親しんでもらえる可愛いものに落ち着きました。里芋は丸い形のものが良品なので、ふっくらとしていて、中は真っ白なところが、うさぎのイメージと重なっていると思います」とJAえちご中越里芋生産部会会長の池津伸俊さんと、園芸特産課課長の諸橋敦さんは話す。
長岡地域での里芋の畑は、水田からの転作も多いこともあり、粘土質の土壌が多い。「その分、味はよく乗ると思うのですが、作業面では重労働なんです」と諸橋さん。収穫で掘り上げる際、土離れが悪く、重さが加わって作業が大変なのだそうだ。
収穫した里芋は、シートをかけて保存
株から大まかに芋をばらしていく
扇風機等を使って乾燥させる
種芋の植え付けは4月中旬から6月くらいまでと幅があり、収穫も早い生産者は9月下旬から始まり、出荷が本格化するのは11月。栽培で重要なのは、水の管理と良い種芋。「土の中の水を切らさないことと、逆に溜めすぎないこと。その加減ですね」と池津さん。「去年(令和5年)のように雨が少ないと水が足りなくて芋がくびれるんです。また、雨の後、畝の間に水がたまった状態で夏の太陽が差すとお湯になってしまうので、水がさっと抜けるのが理想です」。
種芋は生産者が各自、種芋用の株を栽培している。池津さんは「種の個性がそっくり遺伝するので、良いものを選んでいくことが大切。種芋は大きすぎてもだめなので、それ用の肥培管理をします。昨日も何株も掘りましたけど、なかに“これはいい”と思うものがあり、再来年のことを考えながら、いい種芋を作ると里芋の出来も変わってきて、手をかければちゃんと返ってくるのが面白いです」。
子芋、孫芋とそれぞれ外していく。切り口が少ないものは、外側に実ったもので柔らかいのだそう
まずは「里うさぎ」の名前を広く知ってもらいたい
収穫した里芋は、ハウスのなかで保存し、順番に出荷される。里芋は寒さに弱く、温度が低いと腐ってしまうので、シートをかけたりしながら保温する。それが2月、3月と太陽の光が強くなってくると、ハウス内の温度が一気に上がる。15度を超えると芽が動く(発芽する)ので、次は温度を下げるなど、違った調整が必要になってくるそうだ。
現在、里うさぎの生産者は個人、法人合わせて38名。令和6年度は、計画では63トンの出荷を目指している。出荷先は地元・長岡の市場。今後の目標は、まずは広く里うさぎの名前を知ってもらい、多くの人に食べていただくこと、とふたりは声を合わせる。
今年の11月下旬には、長岡市の小中学校の栄養士の皆さんが、食育の一貫として、里芋週間を企画。里芋の育て方なども子どもたちに紹介し、給食にも里うさぎを使ったメニューが登場したそうだ。「売り場で里うさぎの紹介をしてくれているスーパーもあって、ありがたいことです。私たちも何か仕掛けを考えて、PRしていきたいなと考えているところです」。
機械で毛羽を取った後、選別機にかける。隙間の幅でサイズごとに分けられる
さらに計量器で重さを計り、規格ごとに分けていく
M~3L以上のA品が「里うさぎ」として出荷される
袋に貼られたシールが里うさぎの目印。箱で購入する人も多いそう
※農産物直売所「なじら~て」で購入できます。
料理の定番としてはみそ汁や豚汁などだが、池津さんのおすすめは唐揚げ。「鶏のから揚げ用の粉を使って揚げたものは、子どもたちも喜んで食べますね」。
今シーズンは昨年と違い、夏場に雨も降ったので、生育は順調。取材の最後に、池津さんがつぶやいた「今年はいい芋が穫れてますよ」という言葉に充実感がにじんでいた。丹精込めて育てた里芋が、地域ブランドとして羽ばたいていく喜びは、今後一層、生産者の皆さんのやりがいに繋がっていくはずだ。
JAえちご中越
ながおか営農センター 園芸特産課 課長
諸橋 敦さん
JAえちご中越
里芋生産部会会長
池津 伸俊さん
お問い合わせ
JAえちご中越 ながおか営農センター
〒940-0861
長岡市川崎町字前田2722-1
TEL:0258-94-4445
FAX:0258-94-4457
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